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第136話

モブ 「俺、恋人いるし」 宮ノ内が俺にそう言った。 あれからなかなか講義に集中できないくなってしまった。 隣の席にいる宮ノ内の存在が気になる。 しかし視線を向けることは出来なかった。 ずっと見てたから気持ち悪いとか思われたか? 冷静になれよ、講義中だぞ。 落ち着け切り替えろ。 「はい、今日はここまでー!」 気がついたら講義は終わっていた。 当然頭には何も入っていない。 「宮ノ内くん!一緒に帰ろうよー!」 待ってましたとばかりに女子から声をかけられる。 本当諦めないよな女子って……こればかりは宮ノ内も苦手みたいで、 「宮ノ内。帰ろうぜ」 「ん」 女子の誘いを断り(つか殆ど無視) 俺の声かけに素直に反応する。 そう、俺はいつも通りにしてればいいんだ。 「あ、俺今日は迎えが来てるんだ」 「何……車?」 「いや……」 「あーもしかして、さっき言ってた恋人とか?」 「まぁ……ね」 へー宮ノ内の恋人ってどんな奴だろう? こんなカッコいい奴の恋人……かなり興味あるし、個人的にも見てみたい。 予備校の出入口はガラス扉なので、外の様子がぼんやり見える。 この夜遅い時間だけど駅前なので、建物の明かりやネオンのお陰で外は明るかった。 扉に向かう宮ノ内が、 「…ち、何やってんだよ」 舌打ちしながら足早に外に向かう。 あわてて俺も追いかけた。 外に飛び出すと、ひとりの女子を抱きしめる宮ノ内の姿があった。 宮ノ内が抱きしめた女子は、上品な制服を着ていて、ふわりとした長い髪が女の子らしくて可愛い容姿をしていた。 履いている靴も高級そう。 それよりも、くりっとした瞳が愛らしく急に抱きつかれて驚いたのか、ぱちくりとする表情が可愛らしい。 見たことない制服だけど、どこかの私立のお嬢様学校? 驚いて振り返り宮ノ内を見るしぐさははやり可愛い。 宮ノ内の胸にすり寄って何かこっそり話をしている二人の様子は、羨ましいくらい甘く見えた。 でも、宮ノ内が誰だお前?って言うくらい彼女にベタベタしてる! 何だよその甘い顔。 彼のクールな印象が崩れる。 大切な人だというのが俺にもよくわかるけど…… 女子には冷たい奴だと思っていたので、かなり脳内が混乱している。 彼女の肩を抱き、優しく頭を撫でている彼の姿は、回りにいる学生も驚きながら眺めていた。 「なーんだ、君マジで待ち合わせしてたんだー」 彼女の隣にいた、茶髪の男が呟いた。 胡散臭い風貌してるな……ナンパか? パンツのポケットに手を突っ込み、格好もゆるくてだらしがない。 こういう品のない奴は嫌いだ。 「あー俺さっきも言ったけど、彼女のことナンパしてないからな。そんな警戒するなよ。もう時間だから行くし」 そう言いながら茶髪の男はその場を立ち去る。 しかし、ふと何か思い出したように振り向き…… 「あーあんた、宮ノ内霧緒だよな?リアルで見るとマジでイケメンだな!」 そう宮ノ内に言うと、彼はニヤニヤ笑いながら立ち去って行った。

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