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第137話
あ……
抱きしめられた瞬間誰かわかった。
ふわりと香る、この匂い。
確認せずにはいられない。
顔が見たい……
振り返ったそこにずっと会いたいと思っていた霧緒の顔があって安心した。
それと同時にここで待ちぼうけされていた怒りがこみ上げてきて、めっちゃ殴りたい蹴りたい!
でもこんな格好だし、人が見てる前ではさすがに躊躇われたのでぐっと堪える。
霧緒にすり寄り、小声で愚痴った。
『ど ん だ け 待たすんだよ!めっちゃ俺ヤバかったんだからなっ!』
『悪い講義の時間、間違えた。なんだ詩、寂しかった?』
『さ、寂しいとかじゃなくて!俺男なのに男から声かけられて、かつら投げつけてやろうかとっ!』
『ウィッグとってもあんま変わらないぞ。その姿だし、やっぱりうん…いいな…かわいい』
優しく頭を撫でられ、引き寄せられた。
普段なら出来ないけど、この姿なら外でもこんなことができるんだな。
文句はまだいい足りないけど、緊張してた気持ちがほぐれ、思わず霧緒の胸に顔を埋めて鼻をクンクンした。
『クンクンって、犬か』
『犬じゃねーけど、いいだろ別に』
『……』
『はぁ……早く帰ろうぜ』
『何、エロいことしたくなった?』
「は?」
思わず顔を上げたら、チュッてキスされた。
!!
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