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第149話 霧緒の誕生日。

「おーぴったりじゃん」 「ちょっとでかくない?動きやすいけど…」 「こういうデザインだから大丈夫」 霧緒の誕生日当日。 電車に乗って霧緒の行きたいとこに出掛けようってなったんだけど、本日の俺のコーディネート担当は何故か彼だ。 「これ好きなんだけど、俺が着ると少し小さいんだよなーこのシャツ」 グレージュ色のロングシャツは丈が俺の膝まである。下は黒のスキニーパンツとスニーカー。 霧緒はロング丈白Tシャツに黒のロングカーディガン、デニムスキニーにオペラシューズを履いていて…よく似合ってカッコいいです。 「詩が着ると可愛くなるな…」 「…それ嬉しくないから」 「カッコいいです」 「思ってねーだろっ!」 電車に乗ってるとまぁ当然周囲からチラチラ視線を感じる。 学校で感じる視線とはまた違って落ち着かない。 視線の先にいるのは当然目の前にいる俺の彼氏なんですけど。ほらほらカッコいいでしょ? 「モテモテですね今日も…」 「別に何とも思わないし。慣れてるし」 「あ、ねぇねぇ今までにスカウトされたりしたことある?」 「んー…まぁ……ある」 「おおお!スゲーな!」 「何……惚れ直した?」 ニヤニヤしだす霧緒。 近くにいるおば様が俺達のことガン見してるんだけど? 小声で話してるからさすがに会話までは聞かれてないと思う。 「…あ、いやそうじゃないっす」 「…つか、詩も見られてる」 「え」 パッと周囲を見渡すと何人かと目が合った。 ?? 「なんで?」 「なんでってどうでもいい奴なんか見ないだろ」 「あ、俺の格好、パジャマっぽいとか思われてる?」 「……お前んなこと思ってんのか」 「あ、いえ…全くっ!」 「車内人増えて来たな。外人さん多いなー」 「観光地だしな。迷子になるなよ」 「なるかよ!わ!あ、あの人!絶対身長2m以上あるってスゲー!抱えてるリュックが小さく見えるな」 「ハイハイ、ほら…離れんなよ」 急に耳打ちされてドキッとしてしまった。 にっこり微笑む笑顔が、俺にはニヤニヤ顔に見えて仕方がない。 でも俺が人と接触しないようにさりげなく身体でガードしてくれている。でもくっつき過ぎじゃないか? 近くのガン見おば様はむっちゃスマホに何か打ち込んでる。 車内だし混んでるし二人の距離が近いのは仕方ないけど、耳元で囁かれるとこそばゆいしドキドキする… 「赤くなんなよ。勿体無いから」 「…耳…やめれって…」 「いいだろこれくらい」 「近…い…」 「…ダメ?」 「だ、ダメ…」 「 ス キ 」 「!!だだからっ!やめろって!!」 我慢出来ずに焦って叫んでしまい、一斉に周囲から注目を浴びてしまった! あわわわ!!どうしよ!sorryごめんなさい! こここの人、痴漢とかそんなんじゃないんですよ!! 「ほら、着いたぞー」 動揺の一つも見せない霧緒に引き摺られるように電車を降りた。 恥ずかしい!!

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