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第150話

おわ!! たっ………かーーーい!!!! やって来ました!東京の観光地の一つ。 俺、初めて来たー! 色んな沢山の人が行き交う。 青い空に向かってそびえる電波塔を、下から見上げると高すぎて……たち眩む。 これ、人が作ったんだよな。た、倒れないよな…… 圧倒的な姿に興奮してしまう。 「霧緒これ見上げるとヤバい!デカいな!高いな!」 「凄いよなーこれ」 「うん!凄い!フレームに収まらないけど!どう撮ったらイイんだ!寝ころがって?」 「やめろ阿保。ほらこっち」 人混みの中をかき分け、展望台入り口に向かう。 展望台入り口のロビーは何かのアトラクションに乗り込むみたいにカッコいい!スゲー! 展望台からの眺めはそれは凄い眺めで、遠くは霞んでよく見えなかったけど圧巻だ。 めっちゃ興奮してしまった!当たり前だけどまわりに建物が何もない。 でも高すぎて、窓の方は少し行きづらい。 これは下を見たらヤバいやつだ。 「高いな…」 「た、高すぎだろ…」 霧緒は窓側の手すりに手をかけて通路側にいる俺に来いと促す。 恐る恐る近づき霧緒の隣まで行く。 うわコワ… でも…スゲー眺め…地球ってやっぱり丸いんだな。 「高いとこから…詩と広い景色を見たかった」 「ン?」 「そう思ったらここかなって思って」 ちらりと霧緒に視線を向けると、眼差しはガラスの向こうを真っ直ぐ眺めていて、真剣に何を考えているよう。 その表情は固く何となく不安させられる。 「景色、凄いなぁ……霧緒」 「うん」 「何か見えた?」 「霞んでるけど……まぁ色々見える」 「………そか…」 何だろう……鼻がツンとした。 周りの人混みや話し声が次第に気にならなくなり、二人の所だけ違う時間が流れているような感覚に襲われる。 「詩は将来のこととかお前考えてる?」 「…んーまだあんまり…」 「そか…」 「…霧緒は大学行って勉強するんだろ」 「うん、する」 「…きっとその先も考えてたりするんだろ」 「一応ね…」 「…凄いなぁ」 俺は進学させてもらっているのに、将来の夢とか全然わからない。 実家はねーちゃんが継いでいるから関係ないし。 人生勉強中だ。 「まだまだ先の話だけど、美術館とかさ…」 「…」 「造りたいんだよ……」 「うん…」 霧緒がなりたいもの…… わかった気がして、切なくなってしまった。 追いかけている背中は多分お父さんなんだろう。 詳しくは知らないけど、霧緒のお父さんは建築家だ。 世界のあちこちに作品があるらしく今はスペインに拠点を構えているらしい。 今はほとんど会ってはいないみたいだけど、どんな人だろうな霧緒のお父さん。 隣にいる霧緒の横顔が綺麗で切なくてずっと遠くを見ていて、同じ景色を見ているハズなのに恐らく俺が見てる景色とは違うんだろう。 「霧緒」 ぼんやりと目の前に広がるパノラマを眺めつつ声をかける。 「ん」 「それさ…俺、楽しみにしてる!」 「おう………詩…」 「なにー」 「俺はお前の将来も楽しみにしてる」 「…」 声の方を向くと、しっかりと視線が合った。 真っ直ぐ向けられた言葉が心に溶け込みわし掴む。 長い前髪の隙間から覗く眼差しが優しくてカッコ良くて不覚にもときめいてしまって…… 「う、うん…」 返事するのが精一杯だった。

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