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第163話
「せ、先輩!凄いっ」
「はぁ……はぁ……」
「何をどうやったらこんな短時間でこんなに綺麗に。僕の部屋じゃないみたい!」
菊池先輩のおかげで、小一時間で部屋は綺麗に片付いてしまった。
途中昼飯を買いに僕がコンビニに外出し、先輩は残って部屋を整理してくれた。
できたゴミ袋は3つ。ほとんどが紙くずや空き箱なんかだけど、ゴミステーションに出して来たらあらスッキリ。
「マジ……神だ!神すぎる!」
換気もしたので、部屋は蒸し暑いが部屋に空間ができてとても爽やかに感じて気持ちがいい。
窓を閉めて冷房のスイッチを入れると、冷たい風が送り出されてきた。
「あのね、これが普通なんだよ」
「ス、スミマセン」
「出しっぱなしは駄目。出したところにきちんと戻すしまう。これだけやるだけで大分違うから」
僕の頭をクシャクシャかき回す。
汗をぬぐいながら呆れたように先輩が呟く。
今更ながらもっと片付けておけば良かったと思う訳で。先輩との貴重な一時を無駄にしてしまった……
コンビニのサンドイッチや弁当で腹を満たす。
テーブルを挟んで向かい合い、もそもそ食べるけど、どうも部屋が綺麗に片付いていて落ち着かない。
それに一緒に居るのに、掃除したことにより空間ができてしまい、先輩との距離があいてしまった気がする。
なんか……寂しい……
ベッドを背にして、弁当をつつく先輩がとても遠く感じる。
そわそわ落ち着かなくて、先輩の横に行き、隣にちょこんと座った。
「?」
「あ、あの……あっちに座っているより先輩の隣の方が落ち着くなーと思って……いいかな?」
「……お、おまそういうことを……ま、いいや」
複雑そうな顔をしていたから迷惑かなって思っていたら、ぐいっと肩を引き寄せられた。
頭を撫でられ、髪の毛に先輩の唇が触れるのがわかった。
「もう……飯食ってなきゃキスしてるぞっ!くそ可愛いな」
「え」
何がくそ可愛いのかわからないけど、キスのチャンスを逃したらしいっ!
「せ、先輩!それじゃ、飯食べ終わったらキスしよう!」
そう言ったら、菊池先輩が盛大に茶をふいていた。
だけど昼飯を食べ終わったら、リクエスト通りキスをしてくれた。
ちゅっと軽いキスから始まると、柔らかい感触とお茶で、少し冷えた先輩の唇の冷たさが気持ちよい。
前にしたのは学校で、大体帰りがけにする短いキスだった。
キスをすると一気に先輩との距離が近づくし、抱きしめらていると凄く落ち着く。
それと同時に胸がドキドキしてるのがわかる。
角度を変えたところでスルっと舌が入ってきた。
未だに慣れない大人のキスに戸惑うけれど、頑張って自分の舌を絡ませる。
「はふ………」
髪を撫でられたかと思ったら、後頭部を固定され、思い切り舌を吸われた。
「!」
口内をくちゅくちゅと掻き回し、歯列を熱い舌がなぞられる。そのうち溢れる唾液が行き場をなくし口の脇から伝って零れた。
今までなかった濃厚なキスに、頭が真っ白になる。
驚きで先輩のシャツを思い切り握りしめてしまった。
「……あぅ……ん……」
先輩の舌が僕の口内すべてを這いまわり、翻弄される僕は、されるがままで床に押し倒されていることにも気がつかなかった。
くちゅ……熱い唇がやっと離れ、唾液が糸をひく。
「はぁ……はぁ……」
い、今の……何……
身体からだらりと力が抜けてしまい、口も閉じることができずに半開き状態だ。
覆いかぶさり、僕を見下ろす先輩の唇は艶やかに唾液で濡れてやらしく見えた。
いつもの人懐っこい表情は消え、熱っぽく僕を見つめている。
「………キスからさきの展開……予想できてる?」
「……あ、あの……」
「考えて……?」
先輩の指は前髪を梳き、僕の唇に触れ唾液を拭ってくれた。
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