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第170話
玲二
わ!
わわ!
ワン!!!
「あゎわっ!」
菊池先輩の家の玄関を開けると、勢いよく飛び出して来たのは黒い大きな犬!
あ、顎に激突……い、痛い……
「こらエリー!やめろ」
エリーと呼ばれた犬は、人懐っこい感じでしっぽを振りながら僕の匂いを嗅いでいる。
「こんにちは。えっと、ラブラドールレトリバーだっけ?」
「そう、あと猫もいるから。屋内動物平気?」
「うん、大丈夫」
菊池先輩の家は、吹き抜けの天井が高くて解放感があって凄く明るく感じる。
家の中には観葉植物があちらこちらにあって癒しの空間みたい。
「コーラ飲む?」
「はーい」
ソファーに座ると、隣にエリーが来てクンクンされる。
首の辺りを撫でると、毛並みが艶々で気持ちがいい……わぁー綺麗な目をしてるなぁ。
「ほら、エリーそこどけ邪魔。屋内の隣は俺なの。はいどうぞ」
「あ、有り難う……ございます」
グラスの中によく冷えたコーラ。
冷たくてシュワシュワした感覚が喉を通り心地好い。
はーやっぱり緊張してしまうな。
今日の菊池先輩もやっぱりカッコよくていつもと変わらない。
ここまでくる間も緊張して、どうやって来たのかよく覚えてないくらいだった。
「屋内……」
「ふぁ、ふぁい!」
隣に座っていた先輩の手が肩に触れ、ビクリと思い切り反応してしまった。
「……」
今度は髪に触れられ撫でられる。
あわあわ……心が破裂しそうに緊張している!
「ぷ……!屋内さん、カチカチ過ぎでしょ」
「だ、だ、だだって!!」
「ま、先に宣言したから当然だよね。でも言わないとずっと出来なそうだしさ。屋内がこんなに意識してくれて嬉しい。ほら、コーラ溢すから」
グラスはテーブルに置かれ、僕は先輩に抱きしめられる。
で、今度は先輩にひたすらクンクンされた。
「せ、先輩ぃ……」
「んー屋内……いい匂い」
「せ、先輩の方が……いい匂い……」
そう……菊池先輩の匂いは堪らなく良い香りがして、ドキドキするんだ。
つられて僕もクンクンしてしまった。
ドキドキするけど、こうしてると心が癒されてくる……あったかいなぁ。
真夏の暑い中にさっきまでいたのに、菊池先輩の体温は心地よくて、身体がふにゃふにゃになってしまう。
あ、
先輩の鼓動……ドキンドキンと僕の鼓動と重なるように伝わってくる。
早い……そのリズムを聞いているだけで幸せだった。
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