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第177話 夏休み。

7月末 …… 『詩…あなた何日に帰ってくるの?』 良く聞き慣れた声がスマホの向こうから聞こえてくる。優しく透き通るような美しい声だ。 「…あーええっと、いつがいいかなぁ」 『…夏休み入ったら帰るって言ってたじゃないのー』 「そうだっけ?こっちにも色々予定があってさー」 『新しい友達ができたことはいい事だけど、こっちも皆詩が帰ってくるの心待ちにしてるのよ?』 「だよね!えっと八月入ったらすぐに帰るから!連絡するからー」 『わかったわー清江にもそう伝えておくから、ちゃんと連絡してね?当日は駅まで迎えに行かせるから』 あーだよね。迎えは清江だよね。脳裏に凛々しい姉の顔が浮かぶ……… 「ん、わかった!ねー華江姉ちゃん、餅子は元気?」 『元気にしてるわよ。詩、早く帰ってお散歩連れて行ってあげてね』 「うん!もっちー!まってってーーーー!!!」 『…叫んでも餅子には聞こえません』 「あ、はい…すみません…あーそれとあのさ、お盆に友達呼んでもいい?」 『…友達って?』 「隣の家の宮ノ内先輩!」 『ああ…隣の…お世話になってるものね。どうぞぉ』 「やった!!」 霧緒の誕生日イベントも無事に終えて、夏休みも明日から8月に入る。 夏休み当初の予定ではすぐ実家に帰るってことだったんだけど。 確かにその予定だったんだけど…ねー。 彼氏の誕生日が7月28日って知ったらさ、一緒にお祝いしたいじゃん?ほっといて帰れないよね! それにー… 本人には知られたくないけど、霧緒と離れるのが正直ちょっと…ええと…結構?寂しくて…帰省するを渋っている状態です。 そんな俺って可愛い…… ああ…でも確かに実家の皆にも友達にも会いたい、帰らない訳にはいかないし、長女の華江姉ちゃんから催促の電話が来てしまった。 次は多分キレる。 愛犬の餅子こともっちーにも会いたい… もっちー… 夢を見て愛犬だと思い込み、霧緒の頭を抱えて寝ていたのはいつだったか。 あの時は本当びっくりしたな。 あの頃は霧緒のことをまだ宮ノ内先輩って呼んでいて、それまでただの学校の先輩だったのに…… ぐっと二人の距離が縮まった出来事の一つだ。 可愛い愛犬のことを思い出す。

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