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第180話
久しぶりの実家。
萩生家,俺ん家はとある県の山奥にある。
緑豊かな田舎の普通の家だよ。
家族構成は、
長女の華江 姉ちゃんと保 さん夫婦。
次女の清江 。
信 じいちゃんと、柴犬の餅子 。
電車を何回か乗り継いでたどり着く田舎の駅…風が都会の熱風と違って爽やかで気持ちがいい。
でも、やっぱり……
「あっつー!しかしほとばしる日差し!」
何とか頑張ってここまで来た!
…はは…あはは……めっちゃ身体が重い。主に腰と下半身がだよ。え、重い理由?
そ、そんなの決まってるじゃないか。
昨日は俺が白旗あげてるのに、なかなかやめてくれなかったあいつのせいで、見えるか見えないか際どいとこにキスマークもしっかりつけられてガッツリ愛されてしまった訳ですよ。
キスマーク……消えるまで見られないようにしないとなぁ。
ほぼ…朝まで…あんあんやんやんとしてしまった。
あ…あはは…愛されてるな俺…思い返すとキュンキュンするー。
でも…マジ眠いし、重いし…
ここまで良く辿り着いたな俺!
使い慣れ親しんだ改札を出ると、
「ウター!」
駅のロータリーに見慣れた車と見慣れた女性。
「清江!」
美しい黒髪を後ろに一つに束ね、白シャツにワイドパンツ姿。眉は太めできっつい…いや、凛々しい姉だ。
「ただいまー!久しぶりー!」
「おかえり詩!とりあえずさ、暑いから早く乗って!」
「はーい」
「…詩、あんまり日焼けしてないわね。……そんな帽子あんた持ってたっけ?」
「ン…今日焼け対策バッチリしてるから。帽子は隣ん家のキリ先輩にもらった」
「え!いただいた?何それ!あんたちゃんとお礼した?つか何もらってんのよ!」
「最初断ったけど!しつこ…いや、何回も断るのも失礼じゃん。キリ先輩はもう使わないからって言ってたからもらったの。もっちーの散歩で使いなって」
…それとしっかり日焼け止めも~二種類持たされたんだけどね!
「そうなの?お隣さん宮ノ内…霧緒くんだっけ?詩と同じ高校なのよね?そんな気遣いしてもらって…え、どんな子なのよ」
「ははは…聞いてめっちゃ…イケメン…ほらほら見てよ、右側がキリ先輩」
自分のスマホの画像を見せる。霧緒と菊池先輩が一緒にいるところを撮った秘蔵の一枚。
どっちもイケメン!だけどやっぱり霧緒が一番カッコいいかな!自慢自慢!
ふふふ!で、俺の彼氏なんだぜ!って心の中で呟いた。
「…やだぁ…まじ!?…めっちゃイケメンじゃん!二人ともなにそれ!」
「今3年なんだけどさ、カッコ良くてめっちゃモテるんだよ!今親が海外行ってて一人暮らし中なんだって」
「え、一人暮らしなの?何か寂しいわね霧緒くん。ちゃんと食べてるのかしら…」
「うちのばあちゃんが前から結構お裾分けしてるみたいだよ。俺も作って持って行ったり椿の家で一緒に食べたりしてる。お盆に先輩来るからね!」
「そっかー椿のおばあちゃん料理上手だものね。うちに来た時には美味しいいっぱいご飯食べさせてあげなきゃ!っていうことだから詩今日からしっかり働いて!」
「えーー!!」
「えー!じゃない!餅子は夕方散歩に連れて行ってあげなさいよ」
「!うん!それ任せて!もっちーいい子にしてるかな元気かな!」
「もう老犬だからねー。元気だけど、寝てばかりいるわよ。もう詩が来るって分かってるみたいで朝からソワソワしてるわ」
「そっかー!」
車は緩い坂道を上がって行く。
どこもかしこも見慣れた風景だ。
たった4ヶ月くらいしか経ってないのに懐かしく感じる。
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