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第184話
ぶぶーーーーーーーー!!
米つぶが飛ぶ!
「こらっ!詩!お行儀の悪いことしないの!」
「ごっごめ!って!イヤイヤイヤ!姉ちゃん達なんつー会話してんだよ!!」
「こっちは真剣に話をしてるの!女でも男でも、可愛い弟をきちんと幸せにしてくれる人を今から選んでおかないと、お姉ちゃんは心配なんだから。そうね、山一つで済むなら安いものだわー」
「華江姉さんの言う通り。確かにあんたは萩生家の大事な末っ子。お料理に掃除洗濯お裁縫にお作法は、まるで妹のように仕込んでやったわ。頭はあれだけど、どこに嫁がせてもおかしくない箱入り息子。母が若い頃に同級生で親友だった宮ノ内家のお子さんが貰い手なら母さんも喜ぶわよね~きっと」
「本当そうねぇ……」
うるうるしながら仏壇を眺めているけど、飾られている写真の親の笑顔が若干ひきつって見えるのは気のせいだろうか……
「あとは…金を稼げるかどうか…」
ボソリとそう呟いたのは、俺の隣で煮しめを美味しそうに食べている信じいちゃんだった。
ひぃ!じいちゃんまで…!?
「うん、いい男でも、金を稼げないと生きていけないからな」
た、保兄ちゃんっ!!?
「そうね、それが一番大事なところよね。男も女も生きていくには金がかかるわー。畳も張り替えたいし!」
「顔と頭が良くても、稼ぐ能力なければ萩生家には必要ないわね。そうねーまだ学生さんだし、そこの見極めが先々必要かもしれないわ」
「本当そうね。ふふふ、やだわー!なんだかお盆が楽しみになってきちゃった!」
「本当ねー!イケメンは目の保養になるわー」
「…あうぅ…」
「でもね、最後はお互いの気持ちが大事だからね」
「まぁ…そうね保さんの言う通りだわ」
それから霧緒のことについてさらに根掘り葉掘り聞かれてしまった。
相変わらず、うちの姉たちのこのテンションについていけない。
うちの姉ちゃんはちょっと変わってると思う。
普通の人ならこんな話の方向に待ったをかけると思うんだけど、ここにはそういった人がいない。
俺が言っても全く相手にされないし。
この中で一番常識人だろう保兄ちゃんも、ちょっと言うことずれてる気がする。
たぶんこんな妄想ちっくな華江姉ちゃんが大好きだから合わせてくれているんだ。
ええと……
じ、実際もうすでにおつき合いをしているんだけどなぁ……と、思うと俺の心は正直不安でいっぱいだった。
冗談半分で話している気もするし、マジな気もする。
……姉二人の腹の底が見えない。
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