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第192話 *

霧緒 ワンワン! ワンワン! あ、あれがもっちー? 勢いよく走って来た、黒いワンコがいる。 ワンワン! ワンワン! 確か柴犬って犬種だっけ?黒い柴犬。 毛並みは全体的に艶やかな黒色で、足先と口まわりや胸からお腹が白と茶色をしている。 ワンワン! 詩が俺のことを寝ぼけてもっちーって言っていたことを思い出すな。 あの時は頭を鷲掴みされて態勢が苦しかった。 ワンワン! ワンワン! 俺、さっきからスゲー吠えられてんだけど? 「もっちーうるさい!」 詩に抱き抱えられ、やっとおとなしくなるワンコだけど、俺のことが気に入らないのだろうか? 今まで犬と絡んだことがないし、ワンコの知識ゼロだし、興味もないから正直どうしたらいいのかさっぱりわからない。 「初めて会う人には吠えるんだ。霧緒の匂いクンクンさせてあげて」 「詩もクンクンする?」 「いや、お、俺じゃねぇ……」 顔を赤くしながら詩は抱えていたワンコを下に下ろすと、すぐにクンクンと足元に鼻先を近づけてくる。 「もっちーこの人が噂の霧緒だよー!いっぱいクンクンておけよー」 そう言いながら詩は嬉しそうにワンコに抱きついてスリスリしていた。 その様子を見ているだけで詩がワンコを溺愛しているのがよくわかる。 小さい頃から飼ってるって言ってたしな。 俺、間違えられたしな。 でもおい、スリスリし過ぎだろ。 俺の匂いを嗅いでからは、ワンコが吠えることはなくなった。 このワンコと仲良くなれる自信がない……

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