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第193話 *
霧緒
「まあ、遠いところ良く来て下さいました!いらっしゃい!」
玄関の奥から現れたのは、これまた美人な女性。
ふわりとした黒髪は肩まであり、艶やかで優しげな印象だ。
「霧緒くんねー!はじめまして、詩の姉の萩生華江と申します。詩がとってもお世話になっているみたいで、有り難うございますー!」
「宮ノ内霧緒です。お言葉に甘えて遊びに来させていただきました。よろしくお願いします」
華江さんは頬に手を当てながらニコニコと笑みを浮かべ、
「写真で見るより実物の方が素敵じゃないのー!霧緒くん受験生なんですってね大変!お盆の間だけでも羽伸ばして行ってちょうだいね」
「有り難うございます。お世話になります」
「霧緒、部屋こっちー」
詩に案内された部屋は明るい和室の六畳間だ。
窓からは庭の木々が見渡せて気持ちいいが良い。
荷物を置き詩の方を向くと、エアコンのスイッチを入れていた。
「部屋来る前に、冷やしておけば良かったね」
「詩」
「ん」
部屋の隅……エアコンの下で詩の頭を軽く抱き寄せると、吸い込まれるように詩が腕の中におさまる。
きゅっと詩の両腕が背中にまわり、お互い無言で抱きしめ合った。
詩が俺の胸に顔をうずめて、すりと頬を擦りつけてくる。
久々の詩の匂いと体温が伝わって来てヤバい。
顔をうずめたまま詩が呟くと、胸に吐息の熱が伝わってくる。
「霧緒……ひさしぶりー」
「実家、満喫してるか?」
「うん、してる……」
抱きしめる手を詩の細い腰に回すと、身体のラインが確認できてしまいムラムラして来てしまう。
手の感覚だけで、あの時したキスや吐息や乱れた姿が脳裏に蘇るからスゲーな。
指で顎を上に上げると、赤らめた顔の瞳と視線を絡めた。
無意識に尖らせた唇は、キスが欲しいのかただ幼い子供がする仕草か。
今、口にキスしたら……止まらない。
チュ
詩の前髪をかき分けて額に軽くキスをした。
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