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第200話 *

霧緒 賑やかな夕食が始まった。 「霧緒くーん、これ美味しいから食べてね」 「信じいちゃんの漬物、いい感じに漬かってるからどうぞ」 「これはね、頂き物なんだけど美味しいのよー」 「霧緒くん!このお肉は政親くんの差し入れだから!」 「……はい、いただきます」 目の前には沢山のおかずの数々。と、焼き肉用のホットプレート。 色々小皿に取り分けてくれるけど、この量……食えるか? 「霧緒くん焼肉たくさん食べて!これミスジだから!美味しいよ!他にも沢山買ってきたから」 「は、はい」 「政くんは飲みすぎ注意でーす!」 「詩くん久しぶりだねー!あ、ビールおかわりでー!」 「あ!聞いてなーい!!」 詩が叫びながらキッチンにおかわりのビールを取りに向かう。 なるほど、詩はよく動く。 詩だけではなく、華江さん清江さんも取り皿をそつなく手渡したり足りないものを運んだり。 後はお盆で来た来客の相手をしたりしてた。 こんな賑やかな夕食は初めてだ。 清江さんの彼氏、婚約者の政親さんはホットプレートで焼いたお肉を山盛り取り分けてくれた。 「若いからモリモリ食べてね!霧緒くん、君細いよ細い!もっと食べないと!」 政親さんは男前だし恐らくモテるだろう。 そして、この人も……デカい。 身長は俺の方が上だけど、保さんに負けず劣らずの筋肉の持ち主で、ガタイがいい。 何をして鍛えてるんだろうと思っていたら、大学までラグビーをしていたらしい。 厚い胸板と太い太もも……納得だ。 「政くん、はいビールおかわり。さーて、俺も食べる」 俺の隣にやっと詩が座る。 横に座っている政親さんと並ぶと、詩は子供みたいに見える。 「おつかれ」 「ん、霧緒肉食った?うおお……めっちゃ美味そう」 「美味いよ。これワサビと塩つけるとマジ美味い」 「おーそれいいな。俺もやってみよう。うあ!うまー!」 「だろ」 「葉っぱで巻いたのも旨いよなー。あ、これ信じいちゃんが作ったトマト!めっちゃ美味しいから食べて食べて」 「……本当だ旨い。味が濃いな」 「だろー!今朝採ったやつだから新鮮だし、身体にいいしな!」 飯は詩と何回も一緒に食べているから気を遣わずに食える。 何気ない会話が気持ち良くて飯がさらに美味しい。 気がつかなかったけれど、俺らのその何気ないやり取りを、萩生家の人たちがニコニコしながら見守っていた。

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