205 / 506
第205話 *
霧緒
甘い……匂いだ。
柔らかい髪から、ふわりと香るシャンプーの香りは酷く俺の鼻腔をくすぐる。
襲う眠気に勝てず、すぐにスゥスゥと詩の寝息が聞こえてきた。
「寝るの早すぎだろ……」
無意識に俺の胸に顔を押し当ててくる詩の姿はぶっちゃけ、全部脱がして全身なめ回したいほどのいとおしさだ。
……ヤリテェ……
ヤりまくりるのも健全な男子高生なんじゃね?
都合の良いように考えてムラムラするけど、眠いのも確かで瞼が重くなる。
詩の背中に腕をまわし、背中を優しく撫でると伝わってくるぬくもりが心地よく、さらに眠気が増す。
こいつがいるといないとじゃ、こんなに違うのか……
出会ってからまだ数か月、今まで俺はどうやって生きて来たのかって思うくらい、今満たされている。
もうこいつのいない日々なんて正直考えられない。
詩の事を考えると、今すぐでなくても家族に二人の関係を認めてもらいたいとは思う。
まだ若いからとか一時的な感情だとかそういうのじゃないんだ。
今進路に対しても前向きになれている自分がいるのは詩のおかげだし、他人の事を少しだけど考える余裕ができたのもこいつといるようになってからだ。
変わるきっかけを与えてくれた大事な人に対しては、俺も真剣に向き合っていきたい。
それで後悔なんてしたくない。
ま……ただ惚れてるからなんだけど。
だれにもやるつもりないし。
……ぎゅ……
瞼を閉じたあとは、ただ愛しい人の温もりだけを感じていた。
ともだちにシェアしよう!