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第211話 夜祭り。
姉ちゃん達のことは、とりあえず置いといて、霧緒と夜祭りを楽しむことにした。
待ち合わせ場所に指定したお地蔵さんの前に、淡いピンク色の浴衣を着た女の子が立っていた。
弓女ちゃんだ。
白地にピンク色の花を散らした可愛らしい浴衣と、赤い帯がよく似合っていた。
「弓女ちゃーん!お待たせー!早いね」
「あ、詩ちゃんー!と、そのお友……達……」
「ええとこっちは、学校の先輩で……」
「え!かかかカッコいい!!つ、つき合ってくださいっ!!!」
……おーい!
紹介する前に告白する奴がどこにいるんだよー!
弓女ちゃん面食いなところあるから多分なーとは思っていたけど、やっぱり霧緒に食いついたか。
「詩ちゃんっ!こ、この人カッコいい!あ、あのあのお名前を……あの私、梅田弓女って言います!」
「宮ノ内霧緒です」
「きゃー!詩ちゃん!何て素敵なお友達を連れて来てくれたの!」
俺の腕に抱きつき、興奮する弓女ちゃんはもう霧緒しか見えていない様子だ。
「ゆ、弓女ちゃん!折角の可愛い浴衣が崩れちゃうからくっつくなって!ほら~髪飾りとれちゃったよ」
「あ、ごめんなさい。つい……やだ私ったら」
耳の脇についていた、ピンク色の花の飾りをぱちんとつけてあげた。
「……よしこれでOK」
「有難う詩ちゃん。あの霧緒くんって呼んでも大丈夫ですか?私のことは弓女ちゃんって呼んでくださーい」
「……うん……霧緒くんで大丈夫だよ」
今、弓女ちゃんの名前スルーしたな?
積極的な子だから、霧緒の顔が若干引きつってるように見える。
「わー身長高い!霧緒くんって身長いくつなんですかぁ」
「180……ちょいかな」
「きゃー!理想!!」
弓女ちゃんはすでに霧緒の横に移り、霧緒の浴衣の袖を軽く握って引っ張っている。
おいコラ。
「ね!早く行こうー!弓女かき氷食べたいなー」
「あ、ちょっと待って。まだよっちゃんが来てない」
「え、よっちゃん?なんで?」
よっちゃんの名前が出たとたん、眉間に皺を寄せる弓女ちゃん。
「よっちゃんいるって私聞いてないよー!時間過ぎてるし遅刻じゃん」
「ごめん、よっちゃんとも約束したんだよね。ちょっと待ってあげよう」
「えー仕方ないなぁ」
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