211 / 506

第211話 夜祭り。

姉ちゃん達のことは、とりあえず置いといて、霧緒と夜祭りを楽しむことにした。 待ち合わせ場所に指定したお地蔵さんの前に、淡いピンク色の浴衣を着た女の子が立っていた。 弓女ちゃんだ。 白地にピンク色の花を散らした可愛らしい浴衣と、赤い帯がよく似合っていた。 「弓女ちゃーん!お待たせー!早いね」 「あ、詩ちゃんー!と、そのお友……達……」 「ええとこっちは、学校の先輩で……」 「え!かかかカッコいい!!つ、つき合ってくださいっ!!!」 ……おーい! 紹介する前に告白する奴がどこにいるんだよー! 弓女ちゃん面食いなところあるから多分なーとは思っていたけど、やっぱり霧緒に食いついたか。 「詩ちゃんっ!こ、この人カッコいい!あ、あのあのお名前を……あの私、梅田弓女って言います!」 「宮ノ内霧緒です」 「きゃー!詩ちゃん!何て素敵なお友達を連れて来てくれたの!」 俺の腕に抱きつき、興奮する弓女ちゃんはもう霧緒しか見えていない様子だ。 「ゆ、弓女ちゃん!折角の可愛い浴衣が崩れちゃうからくっつくなって!ほら~髪飾りとれちゃったよ」 「あ、ごめんなさい。つい……やだ私ったら」 耳の脇についていた、ピンク色の花の飾りをぱちんとつけてあげた。 「……よしこれでOK」 「有難う詩ちゃん。あの霧緒くんって呼んでも大丈夫ですか?私のことは弓女ちゃんって呼んでくださーい」 「……うん……霧緒くんで大丈夫だよ」 今、弓女ちゃんの名前スルーしたな? 積極的な子だから、霧緒の顔が若干引きつってるように見える。 「わー身長高い!霧緒くんって身長いくつなんですかぁ」 「180……ちょいかな」 「きゃー!理想!!」 弓女ちゃんはすでに霧緒の横に移り、霧緒の浴衣の袖を軽く握って引っ張っている。 おいコラ。 「ね!早く行こうー!弓女かき氷食べたいなー」 「あ、ちょっと待って。まだよっちゃんが来てない」 「え、よっちゃん?なんで?」 よっちゃんの名前が出たとたん、眉間に皺を寄せる弓女ちゃん。 「よっちゃんいるって私聞いてないよー!時間過ぎてるし遅刻じゃん」 「ごめん、よっちゃんとも約束したんだよね。ちょっと待ってあげよう」 「えー仕方ないなぁ」

ともだちにシェアしよう!