212 / 506

第212話

「わりぃ!遅れたー!!」 10分遅れでよっちゃんが到着した。 よっちゃんはグレーの甚平姿だ。 「いやー!弟が花火するとか言い出してさー!手持ち花火買いに行かされちゃって」 「おつかれ!じゃ、行こうぜ!あ、よっちゃん紹介紹介!俺の友達の宮ノ内霧緒」 「おー!どうもよろしく!俺のことはよっちゃんって呼んでくれ!」 「ども」 「お!霧緒……って、やっぱり都会人って感じで、男前じゃん?この辺にいないタイプだなー!部活何やってんの?」 「……部活動はしてないかな」 「えー!マジで?霧緒って背高いのに勿体なくね?バスケとかバレーとかやってそう!なぁ詩」 「あーバスケとか確かにやってそう!って霧緒、帰宅部だもんな」 「まぁね」 「そうかー!中々勿体ないな!もっとさー男は鍛えないとなー!」 「……筋肉馬鹿だからフラれるのよ」 「フラれてねぇって!しつこいぞ弓女」 「なによ」 「なんだよ」 あらー、この二人ってこんな感じだったっけ? 弓女ちゃんの友達が、よっちゃんにフラれたって言ってたけど、どんなフリ方したんだよよっちゃん。 「俺も少し鍛えてもいいかな……」 「え」 「あ、色々落ち着いたらだけどな」 おー!おー?どういう風の吹き回しか、霧緒がよっちゃんに影響されてる? 運動してないといっても、身体は割と引き締まってると思うんだけどなー。 「受験終わったらな」 「はは、そうだね」 「……え……受験?」 弓女ちゃんとにらみ合っていたよっちゃんが、急にこちらを振り向き、霧緒の顔を伺う。 「そう、霧緒は3年だから、ただいま花咲く受験生」 「……花咲かねぇだろ」 「え、何ですか?霧緒……さんは先輩……すか」 「ん」 瞬きを無駄にしたよっちゃんは、恐る恐る霧緒の顔を無表情で眺め。 「さ、さーせん……!!!」 ペコリとお辞儀をした。 「俺てっきり同い年かと思って、めっちゃため口きいちゃいました!さーせん!」 「あ、いや……別にいいし……」 「いやいや!先輩に対してマジすみませんでしたーー!」 最初とは全く違うよっちゃんの言葉遣いと、態度に霧緒は引き気味だ。 部活で培われたのだろう上下関係の厳しさがそうさせるのか? 「彼は中高とサッカー部のようです」 ぼつりと霧緒に伝えると、あぁと納得したようだった。 「あ、アニキって呼んでいいですか!!!!!」 「イヤだ」

ともだちにシェアしよう!