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第212話
「わりぃ!遅れたー!!」
10分遅れでよっちゃんが到着した。
よっちゃんはグレーの甚平姿だ。
「いやー!弟が花火するとか言い出してさー!手持ち花火買いに行かされちゃって」
「おつかれ!じゃ、行こうぜ!あ、よっちゃん紹介紹介!俺の友達の宮ノ内霧緒」
「おー!どうもよろしく!俺のことはよっちゃんって呼んでくれ!」
「ども」
「お!霧緒……って、やっぱり都会人って感じで、男前じゃん?この辺にいないタイプだなー!部活何やってんの?」
「……部活動はしてないかな」
「えー!マジで?霧緒って背高いのに勿体なくね?バスケとかバレーとかやってそう!なぁ詩」
「あーバスケとか確かにやってそう!って霧緒、帰宅部だもんな」
「まぁね」
「そうかー!中々勿体ないな!もっとさー男は鍛えないとなー!」
「……筋肉馬鹿だからフラれるのよ」
「フラれてねぇって!しつこいぞ弓女」
「なによ」
「なんだよ」
あらー、この二人ってこんな感じだったっけ?
弓女ちゃんの友達が、よっちゃんにフラれたって言ってたけど、どんなフリ方したんだよよっちゃん。
「俺も少し鍛えてもいいかな……」
「え」
「あ、色々落ち着いたらだけどな」
おー!おー?どういう風の吹き回しか、霧緒がよっちゃんに影響されてる?
運動してないといっても、身体は割と引き締まってると思うんだけどなー。
「受験終わったらな」
「はは、そうだね」
「……え……受験?」
弓女ちゃんとにらみ合っていたよっちゃんが、急にこちらを振り向き、霧緒の顔を伺う。
「そう、霧緒は3年だから、ただいま花咲く受験生」
「……花咲かねぇだろ」
「え、何ですか?霧緒……さんは先輩……すか」
「ん」
瞬きを無駄にしたよっちゃんは、恐る恐る霧緒の顔を無表情で眺め。
「さ、さーせん……!!!」
ペコリとお辞儀をした。
「俺てっきり同い年かと思って、めっちゃため口きいちゃいました!さーせん!」
「あ、いや……別にいいし……」
「いやいや!先輩に対してマジすみませんでしたーー!」
最初とは全く違うよっちゃんの言葉遣いと、態度に霧緒は引き気味だ。
部活で培われたのだろう上下関係の厳しさがそうさせるのか?
「彼は中高とサッカー部のようです」
ぼつりと霧緒に伝えると、あぁと納得したようだった。
「あ、アニキって呼んでいいですか!!!!!」
「イヤだ」
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