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第215話

神社には、入口が東と西と南にある。 西側は花火大会があるので、花火を見る人で人数が多い。 南側は鳥居も階段もない車両用の道路だ。 東側は木々が鬱蒼と茂り、緩い参道が続く。 提灯の数も少ないので、賑やかさはないし夜というのもあって、少し不気味な雰囲気が漂う。 俺と霧緒は、その東側の薄暗い参道を歩いていた。 霧緒に手を握られて、ぐんぐん引っ張られる感じだ。 「……霧緒?花火見ないの?」 「……」 「おーい?」 「……」 「……」 繋ぐ手に少し力を込めて引っ張ると、霧緒が立ち止まり溜息をついた。 「……霧緒ごめん。女の子たちうるさかったよな。いつの間にか人数増えてたし……疲れた?」 「いや……」 霧緒の表情は、相変わらす無表情な感じだけど、少し疲れているのが伺える。 「ゆっくり過ごしてもらう為に呼んだのに、逆に疲れさせちゃったかな。……あはは」 「……」 「家帰ってさ、ゆっくりす……」 !! 言葉の続きが出てこなかった…… いきなり呼吸がさえぎられて、びっくりしたんだけど…… こ、こんなタイミングでキスされるとは思わなかった!!! 「ふ……」 俺は襟足を掴まれ、参道のど真ん中でキスをされている。 ちょっと! ちょっと待て!!! かなり強引なキスですけど!? 「……むっ…は!はぁ!」 「……誰もいないの……確認済みだし」 唇が触れる距離で呟かれ、鼓動が早まる。 言い方がぶっきらぼうなんだけど……なんで?……どうした。 参道の脇にある小道を入ると、小さなお堂に続いていて、昼間神社に行ったときに一度通った道だった。 あれ、この道なんか…… 嫌な予感が……しませんか……? 「その予感、的中ってやつ?」 !!!! 「ちょっと!ちょ……」 「言葉に出てるから」 ぬーーー!!!! 闇纏う小道に引き込まれ、再び口を塞がれた。

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