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第216話 *
霧緒
あー……
それ駄目。
あーそれもアウト……
触んな。
……
夜祭に行くメンバーと合流するのは全く構わないし、女の子にわきゃわきゃ言われるのも慣れてるからいい。
でも、詩に抱き着いたり、詩の腕に絡んだり、とりあえず距離が近い。
その女の子の髪を直す詩もそうだけど、それが普通なのかもしれないけれど!俺から見たら完全アウトだ。
……近い……
離れろっつーの……
詩から離れ、俺の横に来た女の子は袖を握り何かと喋ってくる。
詩の話題は耳に入るけど、そのほかは右から左へ流れて何も入って来ない。
気がつくと数人の女の子が加わってキャピキャピが大きくなった。
やれやれ。女子はどこも同じなんだな……
呆れつつぼーっとしてたら、詩たちと離れてしまった。
詩がいなければここにいる意味ないし、帰りたい。
そう思ったけれど、この子たちってよく考えたら詩の後輩なんだよな。
雑にあしらうのもよくないだろうと思い、とりあえず詩の姿を人込みの中で探した。
やっと樹の下にいる詩を見つけたと思ったら、幼馴染に口を拭ってもらっているではないか。
……くっそ……何してんだ。
見ていると、くっついたティッシュを再びとってもらうのに、幼馴染にまた唇を触らせてやがる。
久しぶりに、自分からどす黒いものが出てくるのを感じた。
あの唇を触っていいのは俺だけなんだけど。
そう思ったら急にこの取り巻きたちがうざったく思えてしまった。
幼馴染……よっちゃんだっけ?が、詩の事を愛情ではなく友情で好きでいてくれてるようなので、かろうじて我慢できたけど、早く詩と二人になりたかった。
二人と合流して、目に入るのは少し赤くなった詩の唇。
擦ったせいか、少し腫れぼったい。
女の子のうち二人が詩のことが気になるみたいで詩を見つめる視線が熱い。
ふざける振りして詩に近づき、一生懸命アピールしてるけど、本人が全く気がついていないのが幸いだ。
よかった。どんくさい恋人で。
昼間に神社を下見しててよかった。
神社の参拝図を脳内に広げ、二人っきりになれる場所をピックアップする。
西側が花火大会でアウトなら……ここか……
「ん……」
後は思い切り、その唇を堪能するだけだ。
柔らかい唇はいつもより熱を帯びているように感じた。
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