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第222話
夢のような夜祭の時間はあっという間で、逃げたくても逃げることのできない現実に直面する。
俺は精一杯かわい子ぶって……
「今日は、おうちに帰りたくない……」
道中駄々をこねていた。
「……」
可哀想な痛い子を見るような視線で見つめる俺の彼氏。
そんな冷めたい目しなくてもいいじゃねぇか!
「言ってしまったものは仕方ないんだから、腹くくれって」
「は、はい……」
帰りたくない原因は、勿論あれですあれ……清江にブチ切れて、怒鳴ってしまったことだ。
夜祭に行く前に、姉たちに言い放ったセリフを思い返してみる。
確かに恋人だって叫んだし、よりによって清江に向かって、ババアって叫んでしまった。
あんな暴言、清江に初めて言った。
華江姉ちゃんじゃなかったのがせめてもの救いかも……
はぁ……
どうしよう……めっちゃ気が重い。
「大丈夫だって。俺が一緒に居るから」
くしゃりと頭を撫でられ、霧緒が励ましてくれる。
「ん…」
萩生家の玄関が、こんなにも恐ろしく思えたのは初めてかもしれない。
ガララ……
「た、ただいまー」
とりあえず、もっちーが尻尾をふりながらダッシュで迎えてくれて、涙が出そうになる。
あああぁあ!天使すぎるワンコー!
もっちー!もしかしたらこれがお前をモフれる最後のひと時かもしれないー!
「あらーおかえりー!お祭りは楽しかったかしら?」
ニコニコと華江姉ちゃんが出迎えてくれた。
「……う、うん」
「花火のいい音聞こえてたものねー。お風呂湧いてるからね」
「あ、あの華江姉ちゃん……」
「でも、お風呂の前に、けじめつけましょうか?こっちへいらっしゃい」
!!
「は、はい」
ニコニコの華江姉ちゃんがやんわり微笑むときは、マジな時。
この微妙な微笑みは、多分姉弟にしかわからない……
奥座敷へと向かう。
キッチンから、清江が冷たい麦茶を運んできた。
俺に向ける目線がマジ切れてる。
たぶん、ババア発言の方で……
華江姉ちゃんが保兄さんを呼んできて、清江も座る。
俺と霧緒が並んで座る。
「まずは詩、何が言いたいかわかってる?」
「……はい」
「……」
「あの……怒鳴って酷い言い方してしまって、すみませんでした。清江……バ……あんなこと言ってゴメン。反省してる」
「……本当……本当ねぇ!あんたねっ!!私まだ23なんだけどっ!」
呪い殺されそうな清江の眼力が、痛い恐ろしい。
「ま、それは反省してるみたいだからいいとして……詩?」
……ギクリ……
「あなた霧緒くんの恋人は、俺だって言っていたけれど、それは本当?」
「……」
「……」
「……は、い……」
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