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第223話

「は、い……」 手に汗を掻きぎゅっと拳を握りしめる。 ドキンドキンとうるさいくらい鼓動が鳴り響く。 ああ…… 姉たちと保兄さんの視線が痛い。 俺、どう思われてるんだろう。 弟おかしいって……気持ち悪いとか思われてる? 隣にいる霧緒まで変な目で見られたら、生きた心地がしない。 「そう……恋人ってことは、すでに霧緒くんとお付き合いをしているってことよね?」 目の前に対峙している、華江姉ちゃんの顔がまともに見れなくて俯いてしまう。 「……は、はい。そう……です……」 「本気ってことよね?詩」 「……」 「……」 「…………ぃ…」 「声が小さいっ!!!!!」 ビクッ!! 華江姉ちゃんの突然の大声に、俺は勿論恐らく霧緒もびっくりしただろう。 ほんわか癒し系女子からは想像もつかないほどの、ハリのある勇ましい声だ。 「そうだよっ!!本気でつきあってるよっ!!!」 「なら!初めから正々堂々とそう言いなさい!この大馬鹿者っ!」 わ!!!! 華江姉ちゃんがズカっと近づいてきたっ! っと思ったのも一瞬で、身体がふわりと浮いたかと思うと、あっという間に後ろに吹っ飛ばされてしまい、襖に激突する。 「い……!……ってぇ……」 「そんなことで家族に嘘ついてどうするの!友達だなんて!本当大馬鹿者ね。今のは、嘘をついた罰です」 「そ、そんなことって……だって……本当のこと言ったら、姉ちゃん達に怒られると思って」 「怒られて変な目で見られて反対されて?刺されるとでも思ってたの?」 「………………う、うん」 「おかしなこと言うのねー。嘘ついてこのまま誤魔化してた方が、刺されてた可能性大よ?ほら隣の部屋に用意してあったんだから」 !! 隣の襖を開けると、見慣れた華江姉ちゃん愛用のなぎなたがそこに用意されていた。 さすがに清江の顔もヒクついていて、笑っていたのは保兄さんだけだった。 ちなみに霧緒も、目が点になっている。 実は過去に、清江のもとに夜這いに来た元カレが、そのなぎなたの餌食になりそうなったという。そんなマジな修羅場があって、それ以来清江も華江ねえちゃんには、頭が上がらないのだ。 あの当時、俺は明日のニュースの一面を飾ってしまうのではないかとドキドキしたものだった。 「ご、ごめんなさい……」 「自分がしてることが、後ろめたいと思っていたのかもしれないけど、誤魔化しがきく家族じゃないことくらい知ってるでしょ?ふふ……まぁいいわ。これで本人二人から、ちゃんとした答えが聞けたし!よしとしましょう」 「…………え?二人……」 「そ!もう霧緒くんからは、先に話を聞いてたのよ」 「え」 霧緒の方をみると、複雑そうな顔を浮かべていた。 「昨日、朝畑行ったときに、俺から打ち明けたんだ。詩と真剣に交際してるって」 「え」 「立派だったわよ霧緒くん!でもね、詩自身が自分から交際しているってことを、私たち家族に言ってくれないと前に進めないから、霧緒くんから聞いたことはまだ秘密ねって口止めしておいたの」 「………そう……なんだ……」 「そもそも、二人の関係は前から把握済みだったのよ?椿のおばあちゃんから、実は全部聞いてました!うふふふ」 「「…はぁぁ?」」 華江姉ちゃんの、楽しそうな笑顔が眩しすぎて、このままサラサラと風化して砂になってしまいたい…… そう思った……

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