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第224話

「……椿のおばあちゃんね、霧緒くんが久しぶりに椿家に来てくれた時、とても嬉しかったって言ってらしたわ」 「え」 「母さんと、友子さんを思い出したって」 あ… …うちの母さんと霧緒の母さんの友子さんは、同じ学校の同級生で、とても仲が良かったと聞いている。 霧緒は友子さんによく似ているし、俺も母さん似だ。 霧緒の家で、友子さんが俺のことを冴子って呼んで、抱きしめられた時があったっけ。 「椿のおばあちゃん、喜んでいたわよ。特に霧緒くん、あなたのこと」 「え、俺ですか」 「進学して、椿に居候することになった詩と知り合ってからのあなたの変化が著しくて、可愛くてしょうがないって」 「そ……うですか」 「お母さんと友子さんは、当時親友以上に仲が良くて……でもそれぞれの事情から、母は萩生家に嫁いだし、友子さんも別の方との道を選んだ。当時の二人を見ていたおばあちゃんとしては、はじめは詩と霧緒くんが娘達と同じように仲良くなっていくのが複雑だったみたいだけどね。でも二人が本当に仲良しなのを見て微笑ましいって言っていたわ。イケメンでもまだまだ子供だから、可愛い孫みたいだって」 「ば、ばあちゃんが言ってたの?」 「そ、本気で好きなら好き同士、ずっと仲良くいて欲しい。それに反対することないようお願いねって言われてました。霧緒くんをお盆に連れてくるって言うから期待してたのに、友達って紹介されたら、どう迎えたらいいのか……ねぇ、清江」 「……椿のおばあちゃんお気に入りの子だから、変な子ではないと思ったけどさ。こっちもどんな子かきちんと向き合って判断をしたいし。まさか弟の好きな子が、男の子かーって最初は思ったけど、母さんも友子さんが好きだったって言うじゃん?萩生家も、代々当主が女っていうので、昔から偏見の目で見られてきたのもあるし、なんかそういう変わったのに慣れがあるのよね」 「え、え、じゃぁ、本当に……最初から知ってたんだ……」 「頑張って霧緒くんのこと、知らないふりしたのよー!それにあーんなにウエルカムアピールしてたのに、気がつかないなんて、本当おかしな弟ねー」 「……なら、もっと……ちゃんと言ってくれればよかったのに」 「あら、私言ったわよね?山つけるって聞いてたでしょ?山よ山、冗談でそんなこと言わなーい」 いや、いやいや!あの言い方は違うだろ! 余計に警戒心を強めただけだって! 「ま、まぁ……勇気はいると思うわよ。私だって政親さん紹介するの……うん……本当……本当大変だったんだから。でも霧緒くんから先に打ち明けられちゃったからさー、強引にでも早く詩に吐いてもらわないと、けじめつかないじゃん。霧緒くんには意地悪なこと言っちゃって、ごめんなさいね」 「……意地悪って……」 「誕生日にプレゼントした浴衣のこと」 「えーーー!!!あれっ!わざと!??」 「はぁぁ?わざとに決まってるでしょー!ああでもしないとあんた認めないから!私憎まれ役やってあげたんだからね!感謝しなさいよー!」 確かに何であんなに清江は霧緒に突っかかるんだとか思ったけど、あの時は頭に血が上って冷静に考えられなかった。 …… はあああああぁ……マジ……か……

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