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第225話

「……何か……気が抜けた……」 「詩くーん、よかったね!僕も前から聞いていたけど、異論はないよ。一番に詩くんが選んだ人だしね。霧緒くんもきちんと話してくれてありがとう。そういうところもカッコいいなぁ」 あははと保兄さんが和やかに笑う。 「どうせ、そのうちバレるだろうと思ったんで。もし反対されたら、駆け落ちしてもいいかなーなんて思ったし」 「か!駆け落ちっ!」 「……反対されないだろうって思ってたからな」 「そう……か……」 ってことは、本当に本当に? 「はーいじゃ、この話はここまで!もう遅いから、早くお風呂に入って寝る準備してね」 「え、あっ……華江姉ちゃん!」 お開きにしようとする華江姉ちゃんを引き留める。 「なあに?詩」 「ってことはっ!あの……!俺たちのこといいの!?」 「……」 「認めてくれるってこと?」 「……認めるも何も、お互いに想いあってるんだからいいんじゃない?私と保さんも、だから今一緒になっているんだから。それと同じってことよね」 「……」 「やだー!恥ずかしいこと言わせないで!」 華江姉ちゃんは顔を赤らめて、熊みたいな保兄さんの腕をバシバシと叩いていた。 保兄さんも、ニコニコ笑って嬉しそうだ。 「君たちは未成年だし、まだまだ若いからね。詩くん、僕は兄でもあり親代わりでもあると思っているよ。つまり家族は君たちの事を応援してるってことだから。この先、何があるかわからないし、社会にでて環境が変わると、お互いの気持ちも変化してしまうかもしれない。世間に偏見の目で見られることもあるかも。残酷なこというかもしれないけど、別れてしまう事だってありうる。でも迷ったときにね、家族を障害や壁だと思わないで欲しいんだ。何か二人で解決できないことがあったら、相談に乗るからね?」 「は、い……」 「うん……さあ!疲れただろうもう遅いし!早くお風呂入ってきなさい」 保兄さんの一言で、ポロポロと小さい何かがとれていく気がした。 小さな不安の粒みたいなもの…… ……凄く、凄く……嬉しいかも…… 「あ、ありがとう…!」 「ありがとうございます」 俺も霧緒も正座をして、丁寧に頭を下げた。

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