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第229話 *
霧緒
1日忙しかったとしても、気になる箇所を少しでも頭に入れておきたい。
詩が風呂入っている時間を使い、参考書を眺める。
…
はぁ……
大人には敵わないな……全部お見通しだった訳だ。
まだまだ自分が子供だと痛感させられた気がした。
椿のおばあさん。そうだよな、一番俺たちの身近にいる人物だし、萩生家の人たちよりも俺のことを知っている。
そんなにわかりやすかっただろうか?
俺たち、そんなにイチャイチャしてたか?
親の色恋の話は聞きたくないけれど、自分の娘と詩を重ねてしまうのは仕方がないんだろうなって思う。
そして詩の姉ちゃん達、凄かった。
特に華江さん。あんなに華奢なのに、詩が軽々吹っ飛んだ。
詩がどう育てられてきたかはわからないけれど、あいつが姉達に怯える理由がわかった気がした。
「はああ……湯船最高~」
そんなことを考えていると、風呂から上がった詩が客間に入ってきた。
悩み事が解決し、緊張が溶けたのだろうとてもご機嫌だ。
風呂上がりのいい香りが、ふわりと詩から漂う。
スマホを弄りながら、布団の上でゴロゴロする姿を視界の端に入れつつ、目の前のことに集中する。
仰向けになり膝を立てると、柔らかい生地のハーフパンツの裾が下がり、細い太ももが丸見えになっている。
……このページだけ集中して解いてしまおう。
短時間の集中でもそれなりの達成感が得られる。
何となく、親指で自分の下唇に触れ……
なぞる……
……
「ひゃ!!イでっ!!」
……
……うるさ……
のんきな声に集中が削がれてしまい、やれやれと思う。
まぁそれ以前に、視界の端に入っている時点でゴロゴロうだうだしてる姿を、無視したくてもできなかった。
……気になって仕方がない。
口をパクパクさせながら近づいてくる様子が本当面白いんだけど。
そう思っていると、詩に印籠の様にスマホを突き付けられ、画面を見せられる。
…
…
…あいつ、何やってんだ。
初めて見る親友のデレ画像に呆れる。
あーあ……何て顔してんだか。
まさか宗太がマジで男を好きになるなんて信じられなかったけど。
この様子だと、本気の本気なんだろうな。
モテるし、女とも気さくにつきあいができるけど、その割に恋愛に慎重で、遊びでつき合うことかしなかった奴だから、余計に以外だ。
めちゃくちゃデレてやがるー!
誤送信だとか詩が屋内と話してるから、プライベートで楽しむモノだったんだろう。
そうだろうな。まさか詩に見られて、よりによって俺にまで見られてるなんて、あいつ夢にも思わないだろうな。
それはそれでまた面白い。
何かのタイミングでネタにさせてもらおう。
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