249 / 506
第249話
ある日、自分の部屋でテスト勉強をしていると、スマホが鳴った。
類からの着信だ。
『10月の初めにさ、行きたいコンサートがあるんだけど、それに一緒に行って欲しいんだよね』
「コンサート?」
『そう、秋のクラシックコンサート。って言っても、色んな高校が集まって演奏するコンサートなんだけどさ。チケットが2枚あるから、詩一緒に行ってよ』
「何で俺?学校の友達と一緒に行けばいいじゃん。それか玲二と」
『ダチも!兄ちゃんも!!一緒に行きたくないから詩を誘ってんだよ!!!何が悲しくて学校の奴誘わなきゃいけねーんだ!ましてや兄ちゃんなんて……あー鳥肌ー』
……そ、そんなにイヤなのか?
『ちょっと気になる学校があってー。そこの演奏聞きたいんだよ。でも……気軽に声かけられる友達なんていねーし。兄ちゃんにはそんな恥ずかしくて声かけらんねぇし。一人で行くのもちょっと気が引けるっていうか、チケットの発行枚数も決まっててさ、これ申し込み制だからちゃんと消化しないと、次回のチケット取れなくなるかもしれないんだよ』
「はぁ……」
『親友の可愛い弟を助けると思って!詩お願い!』
「そうだなぁ」
『お礼に詩になら抱かれてもいい!あ、それか抱いて欲しいなら……』
「そんなのいらんっ!!!!」
『ちっ……ねー!たーのーむーよー!俺……本当……友達……いないんだよ……』
う……そう言われると心がなんか痛い。
…え、マジで…類って、友達いないのかな?
……
「…………………今回だけだぞ」
『……』
「いいよ。コンサート付き合ってやるよ」
『わー!あ、り、が、と!!詩っていいやつだな!兄ちゃんに好かれるわけだ!兄ちゃんとさーテンション?似てんだよね、詩って』
「そうかぁ?」
『似てる!ぼけぼけのところ!じゃ、来月初めの土曜空けとけよー!!じゃぁなー!』
ぼ、ぼけぼけ?
俺はまだぼけてないぞ!
玲二は……あいつはちょっと天然ボケだけど。
「コンサートかぁ……」
スマホを見つめながらため息をついた。
やれやれ……
何か類に上手いことのせられてるような気がするけど、クラシックコンサートってどんなのかほんの少し興味あるしな。
「さささ、もうちょっとがんばろーーー!」
一人で気合を入れて、再び机に向かうのであった。
ともだちにシェアしよう!