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第250話
「お、思いのほかできた。的な……?」
「おー」
「萩生詩選手、小さくガッツポーズしましたー」
「専属の家庭教師のおかげなんじゃないの?」
「う、うん……!」
苦しい戦いも終わり、気分は爽快だ。
秋の高い空がまた気持ちよくて、さらに開放感がアップする!
鬼家庭教師のおかげで、解答欄を空欄なくうめることができた。スゲー!
「玲二くんにちょっと近づけるかしら」
「このままなら越えられちゃうかな?僕も負けてられないなー」
「そこ!本気出さないで!玲二はそのままでいいからな!」
これからいつものファミレスに行って、ランチなのだ。
遅れて霧緒と菊池先輩が合流することになっている。
ファミレスのお姉さんに、コソッと奥のソファ席のことを聞いてみたら、もう少しで空くみたいで、順番が来たら案内してくれるって言ってくれた。
今日は二人なの?って聞かれたんだけど、何か俺らのこと覚えてるっぽい?
入口の椅子に座りながらメニューを見つつ、何を食うかで玲二と喋って時間を潰す。
ふとレジを見ると、楽器ケースを持った女子が会計を済ませているところだった。
あれってバイオリンかなぁ…?
そうだ……玲二とにちょっと聞いてみよう。
「あのさ、玲二の弟ってどんなやつ?」
「え?弟ー?なんで」
「ほら、あの女子が持ってるのバイオリンケースじゃね?玲二もだけど、弟もバイオリンするんだろ?」
「あーするよー。僕は少し練習するくらいだけど、類は学校でも個人でもレッスンしてるから上手いよ。でもあれはバイオリンケースじゃなくて、ヴィオラケース。」
「へーそうなんだ。ヴィオラって?」
「バイオリンより一回り大きい弦楽器。わかる?」
「……わからん。チェロなら知ってる」
「おー!そのチェロより小さいやつがヴィオラだよ」
「おー?」
さっぱりわからん!!
「弟、類って言うんだけどさー。音楽に関しては真面目なんだけど、性格が僕と全然違って、なんていうか良く言って個性的?悪く言って馬鹿?自分勝手でわがまま?歪んでてタチ悪い……兄をなめてる!あー!何かイライラしてきたー!」
ひぇーー!
俺の第一印象とほとんど一緒ー!
「だから詩には会わせたくないんだよなー」
「そ、そうなのか……」
口をとんがらせてる玲二に頷きつつも、こっそり後悔してる自分がいた。
約束しない方が良かったかなぁ。
でもなぁ……
「4名でお待ちのハギウさまー!お待たせ致しました。奥へどうぞー!」
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