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第255話 *
霧緒
何かそわそわしているかと思ったら、そんなこと。
本当面白い……
あんな言い方しなくても、素直にそう言えばいいのに。
この後用事なかったら、このまま直ぐ抱きたいんだけど……
少し心に余裕が出来たせいか、がっつかなくなった気がする。
余裕っていうか、満たされてるこの感じは詩の実家であった出来事も影響しているだろう。
少し大人になったかなぁ俺。
エッチしたいって誘う詩を、可愛くないとか言いつつ、ニヤけが止まらない。
恥ずかしそうに俯いてる姿が可愛くない訳がないだろ。
でも何はともあれ、予備校行ったその後だ。
いつもは誰もいない無人の家に帰り、風呂に入って寝る。
その繰り返しの毎日だけど、今日は違う。
そう思うだけで、どれだけ自分が浮かれてるか……
10時を過ぎ、自宅に帰り静かにポーチを閉める。
この時間は気温も下がり、半袖ではもう肌寒い。
自宅の中は当然静寂に包まれていて、自分が立てる音以外は無音だ。
静けさと暗闇で本当に来ているのか不安になる。
小さな響きを立てつつ、自室のドアを開けた。
暗い部屋の窓は、ピタリと閉められているけれど、闇はいつものように寒々と針積めておらず、微かに柔らかい。
……
こういう違いなんだよな。
ベッドのすみに毛布にくるまった塊はピクリともしない。
上から少しだけはみ出している柔らかい髪。
この様子だと……多分爆睡してる……かな。
まぁ良いんだけど。
ベッドの端に腰かけ、飛び出してる髪の毛を撫でると、ごろんと寝返り、予想通りのむにゃ顔が現れた。
肌荒れ一つない健康的な肌は、もちもちしていて触り心地が良い。
俺の顔とは造りが違う顔立ちをしているけれど、詩は愛嬌ある顔で綺麗だと思う。
成人して大人になったらどう変わるのか、そう思うと楽しみでもあり、不安でもある。
詩の姉二人はタイプは違うけれど、どちらも美人だ。
こいつは男女に無自覚にモテるタイプっぽいからな……
虫がつかないように気を付けよう。うん。
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