259 / 506

第259話 10月。

それから数日経ったある日。 ********* 都内の某ホテルの一室。 その部屋のベッドの上に、俺萩生詩は横たわっていた。 何故こんな豪華なベッドに寝かされているのかわからない。 横たわる俺に近づく一人の男性の姿。 様子を伺っているのか、まじまじと眺められる。 「……ふぅん。……可愛い顔してんじゃん」 頬から顎を指先で撫で、その人物は呟く。 「肌も綺麗で滑らかだ……」 長い指先で、頬を何度も何度もゆっくりと撫で続け、少し間をおいてベッドが軋んだ。 男性が覆い被さるように、俺に馬乗りになり上から凝視している。 …… 暫く舐めるように見ていた、視線が一点でとまり、凍てつくような、または炎が噴き出すような恐ろしい表情へと変わった。 ……首筋に残る、消えそうな痣。 それは霧緒が先日つけたキスマークに他ならない。 …… そいつは俺のシャツのボタンを、馬乗りになったまま一つずつゆっくりと上から外していく。 外してくたびに、一つ二つと現れ増えていく痣。もう消えそうなものが殆どだけれど、彼にはそれが何だかわかっているようだ。 愛された証。 お恥ずかしながら、毎回身体のあちこちに残されるわけで…… 「……へぇ……やることヤってるってわけかよ」 シャツのボタンが外され、その間から覗く胸の突起を指先で軽く擦られる。 意識はないのに、ピクリと小さく反応してしまう身体。 ……それを見て、男性がニヤリと笑う。 「感度いいんだぁ……可愛いね」 優しく髪を撫でる…… 「じゃ、今度は俺が気持ちよくしてあげる……」 うっとりと囁くその言葉は俺には届かない。 只々ベッドに転がり、スヤスヤと眠りに落ちていた…… ゆっくりとゆっくりと……ベッドが軋む…… ********

ともだちにシェアしよう!