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第260話

今日は類との約束の日。 「おい詩ー!こっち!ここ!」 「え、ああ?!おはようー!」 昼過ぎに駅のホームで待ち合わせだったので、キョロキョロしていたら、類の方から声をかけられた。 夜に出会ったチャラい服装でもなく制服姿でもなく、いたってシンプルな格好だったので気がつかなかった。 喋らないで普通にしてたら、カッコいい高校生って感じなんだけどなぁ……って類って本当に中学生なんだよな。 「ゴメンちょっと遅れた。時間大丈夫?」 「大丈夫。お目当ての学校は一番最後だから時間は問題なし。他の学校聞いても興味ないし」 「何だよそれ。折角だから他の学校のも色々聴きたいんだけど。俺クラシックって初めてだしー」 「……えー、いまいちな学校の聞いてもなぁ」 面倒くさいような表情を浮かべる類と並んで次の電車を待つ。 こうやって並んでみると、身長は俺よりちょっと高いくらい。 175㎝くらいかなぁ。 似てないって思ったけど、横顔というか顎のラインのシャープな感じが少し玲二に似てる気がする。 「詩っていい匂いするな。なんか香水とか使ってる?」 「香水~?全然!」 「あ、そう。甘い匂いするわ。つかそのカーディガン可愛いー」 「普通のカーディガンだろ。くっついてくんなって」 「えー!今日はさ、俺たち恋人っぽく行こうぜー」 「はあぁ?行くかっ!!」 「えーじゃあ仲良しのお友達ってことで!」 駅のホームで二人わちゃわちゃしていると…… 「お、類じゃん!どっか行くのか?」 後ろから類に声がかかった。 ……お?おお?この声は…… 「こんちゃ!これから……うち?」 「そう。お邪魔するわー」 「俺出かけるから、兄ちゃんとイチャイチャしても大丈夫だぜ」 「……あのなぁ~イチャイチャって……あ、あれ?萩生?」 類に声をかけたのは菊池先輩だった。 聞いたことのある声だと思ったんだ。 「あ、どどどどうも!」 「ほらほら電車来た~」 急かすように類に肩を突かれ、ホームに入ってきた急行電車に乗り込む。 「じゃぁなー!菊っち!」 ????状態の菊池先輩をホームに残して、電車が発車する。 これには色々訳がありましてね菊池先輩!! 玲二と約束してるっぽいからもしかしたら……イヤ絶対ここで俺と会ったこと玲二に話すよな。 どう思うかな。驚くだろうなぁ……やっぱり玲二には先にこの日の事、話しておくべきだったかも。 「あ!玲二には話しておいたから気にすんなよ」 「え」 「そんな不安な顔するなって~わかりやすいな。菊っちは知らないからさー仕方ないけど、玲二が今日のお出かけの事知ってれば問題ないっしょ?」 「なに話してたの?」 「昨日それとなく!問題ないって。小言言われたけどさぁ~納得してもらえたし」 類ににっこりスマイルされてしまった。 本当かー?って思ったけど…… 「今日は楽しみにしてたから、詩……本当有難うなマジ感謝だよ。今日1日は俺の仲のいい友達でいて?」 とか切なく言われたら……疑ってしまった自分の心が痛い。 うぁあ……

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