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第261話
電車を乗り換え、たどり着いたのは、もの凄く大きな建物。
「……ここ?ここってビル?でっかー!」
「ん、オフィスが入ってたり、上にはホテルとかレストランとか。ちなみに今いるここは地下1階だから、ほらエスカレーター乗って」
「めっちゃ都会じゃん!」
「ぶ……今までの道のりすべて都内だけどー。ここの3階にコンサートホール入ってるの。そこ行くから」
「はーい」
広すぎて、ここが駅なのかビルの敷地内なのかわからない。類に言われるままエスカレーターに乗り1階へ。
わああ~!どこもかしこも綺麗!
「何か広いし綺麗だし凄いね」
「ここよくドラマとかCMの撮影で使われるみたいだぜ。ムカつくけど確かに綺麗だよな。あ、スマホ電源切っておけよ。ホール内それ系厳禁だからな」
「お、おう」
言われるままスマホの電源をOFFにする。
歩いて長ーいエスカレーターで2階に移動する。どうやらここが受付のようだ。
黒いスーツ姿のお兄さんにチケットと渡してそのまま中へ。
敷き詰められた絨毯がやたらふかふかしていて、土足で歩いてるのが申し訳なくなってくる。
階段をゆっくり上がると、大きな扉がいくつもある場所に出た。
そこにはくつろげるように座り心地のよさそうなソファーが間をおいて設置されおり、落ち着く空間になっていた。
色々な学校の生徒や、その関係者だろうか行き交う人は多く、類から離れないように気をつける。
「おー。何かドキドキするな」
「なんで詩がドキドキするんだよ。そういうとこ面白いよな。トイレ行っとく?」
「行く行く!」
「奥にあるから」
「OK」
トイレを済ませてから戻ってみると、類が誰かと話をしていた。
今日の参加学校の生徒かな?
グレーのブレザーにチェック柄のスラックス姿。
なんか……雰囲気ある人だなぁ。
「お、来た来た」
類が俺に気づき、手招きをするのでそそっと近づいてみた。
すっとその人の視線がこちらを向き、目と目がが合う。
モデルさんみたいにイケメン。
柔らかい視線なんだけど、ちょっと……緊張しますな。
「こ、こんにちは」
誰かわからないけれど、ペコリと挨拶をした。
「こんにちは。本当だ、玲二くんじゃないんだ」
「そうだってば。今日はこいつと一緒に見に来てやったんだよ」
急にがしっとニヤニヤ顔の類に肩を組まれて驚いた。
「ちょっ!な、何すんだよ……っ!」
「えー何赤くなってんだよ。詩かーわーいー!」
どこの誰かもわからない初対面の人の前で抱き着かれたらそら焦るし!!
つかそれ以前に抱き着いてくんなって!!!
ベタベタしてくる類を払いのけている間も、じーっとその人からの視線を感じていた。
「ふぅん……君……可愛いね」
「……は?」
何ていいました?
視線の先には、先ほどと変わらない柔らかい表情をさせているモデルみたいな学生さん。
霧緒と身長同じくらい?
でも霧緒とは違う雰囲気を醸していて、どうもこの人の視線は落ち着かない。
……スゲー見られてるな俺。
騒ぎすぎたかな……ヤバいな。
「あ、あのうるさくてすみません」
「…………ふ、いいよ。どうせ中には聞こえないし。君、類と仲いいんだね」
「え、あーーーーあの」
そうでもないっす!って言いたかったんだけど……
類を見れば、しきりにコクコク首を縦に振ってるので仕方なく……
「は、は、はい……」
と頷くしかなかった。
そして何故かふふっと笑われる。
「類……どうなっても知らないぞ」
「知るかよ。ムカつくんだよ」
「はぁ……やれやれ……」
おおう?何か話が良くわからない????
「詩、早く席行こうぜー」
類に腕を掴まれてモデルさんみたいな人をその場に残し、ぐいぐいとホールの大きな扉の中に吸い込まれていった。
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