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第264話

最後の一校は類が聴きたがっていた学校だ。 人数はそれほど多くはないけれど、どことなく皆上品な感じがする。 あ、さっき類と話していた人が着ていた制服だ。 「……ここの学校の奴ら、超金持ちなんだぜ。楽器もいいの使ってるし、ムカツクよな」 「へーそうなんだ」 耳元で囁かれるのは慣れないけれど、色々と楽器の説明をしてくれるからありがたかった。 確かに制服も高級そうだし、どの楽器もぴかぴかしている。 そして…… 「あれ、ここって男ばかり」 「そうここは男子校だから」 「おー」 どこの学校も女子生徒が圧倒的に多いのに対して、全員男子生徒なのに驚いた。 さっきのモデルみたいな人は……いないみたいだな。 キョロキョロと舞台を眺めていると、目の前にバイオリンを手にしている一人の生徒と目が合った。 細身で……美人っていうの? バイオリンを手にしてとても絵になり、自信に満ち溢れていて、王子様みたいだ。 視線が絡んだのは一瞬だったけれど…… な、なんなんでしょう? この射貫かれたような……高貴なる視線?そんな感じだった。 「なぁ……詩……ここの学校さー。講師にも凄い金かけてるんだぜ……」 肩に寄りかかるくらい、類が顔を寄せて小声で囁く。 「え、何?」 「だから……」 必要以上に小声でよく聞き取れないから、類との距離はほぼ密着していて近い。 何故か俺の手を握ってくるし、ニヤニヤするの本当やめてほしいんだけど! 「そんなにくっつくなって!」 「え、何々?」 「……お前っ!本当は聞こえてんだろっ!!」 「聞こえなーい」 グーパンしたいけれど、ここではマジできないのが悔しい。 ぬぬぬ類あとで覚えておけよー!! そして最後にふさわしい美しい演奏が始まった。

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