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第265話

うおーー!!!!! す、凄かったー! 拍手してもしきれない!! あの人のバイオリンなんて言うかプロ?っていうくらいよかったと思う。 一度目が合ったきりだったけれど、バイオリンの中で一人だけ違う椅子に座っていたし、ソロもあったから、多分一番上手い人なんだろうと思った。 「類!今の学校スゲーな!」 「……」 「おーい!」 「……」 隣で一言も言葉を発しないのが不思議でひょいと顔を覗き込んでみた。 …… ……あれ…… 何で涙目…? そんなに感動したのか? 無言で俯き、何かに耐えているようなで、この会場のこの大きな拍手の中、類だけが違う空間にいるようだった。 見たこともない類の表情に戸惑ってしまい、暫く声をかけられないでいた。 コンサートが終了し、ホールから出た通路にあるソファーに両脚を伸ばし、一人座りほっと一息する。 類はトイレだ。 はぁ~凄かったなぁ。生の演奏って凄いんだな。 めっちゃ……よかったぁ!まだ胸がドキドキしている……クラシック最高ー! 聴いてるだけなのに、変に緊張してしまい、身体がバキバキする。肩凝ったー。 今度は霧緒と一緒に何か聴きにいきたいぜー! そんなことを考えていると、 「あ!いたいた~!君!」 トントンと肩を叩かれた。 「こっちこっち!迎えに来たよ!今日は来てくれて有難う!」 にこやかに話しかけてくれた人物を見てハッとした。 「え?ああ!さっきのバイオリンの人!」 紛れもない、最後に演奏していた学校の生徒だった。 え!なんで!? どうして!?ってこの人めっちゃ美人!めっちゃ笑顔ー!! 「類から話聞いたよ!あ、類今うちの先生と話ししてて、先に行っちゃったんだよ」 「へ」 「あれ?聞いてない?このあと皆で打ち上げするって話。上のレストランを予約してるんだよ。あ、よかったらこれ飲んで!喉渇いたよねー!」 オレンジ味の良く冷えた炭酸のペットボトルを渡された。 「え、あ、有難うございます!いただきます。あ、あのええと?類と知り合いなんですか?」 「あはは!知り合いも知り合い。俺さ、類とは小さい頃からの付き合いなんだよ。幼馴染みたいな?一緒にバイオリンのお稽古してた仲なんだよ」 「へー!そうなんですね!あ!じゃ、玲二も一緒にお稽古してたのかな?」 「玲二くんのことも知ってるんだね」 「え、は、はい……まぁ」 この人、俺より背が高い。 歩き方も優雅な感じで絵になるなーと、ジュースを飲みつつ、隣を歩く人物を眺めた。 この人の周りには優雅な花?バラ?がふぁーって咲いてるような華やか感じがする。 沢山の人を掻き分け、エレベーターの前まで移動した。 「あの!演奏とってもよかったです!俺、生の演奏って聴いたことなかったから、とても興奮しました」 「有難う!聴いたことないって、君も何か楽器やってるんじゃないの?」 「えええ!何も何も!!全然!!今回初めて連れて来てもらったんで、めっちゃ初心者です!」 チン……と開くエレベーターに話しながら二人で乗り込んで行く。 「そうなんだ。ははは。初心者さんに聴いてもらえて光栄だな。気に入ってもらえてよかった。君ってさ、類と仲いいんだね」 「え、そんなこと……」 さっきのモデルみたいな人にも同じこと聞かれたなぁ。 そんなことねえっす!!!と思いつつも、今日だけは仲良しな友達のフリをしておいてやるかと心で呟き。 「な、仲……めっちゃいいです……」 と、言っておくことにした。 「ふぅん。そう……ね、めっちゃって君の口癖かな?それくらい仲いいんだぁ……妬いちゃうなぁ」 「?」 「俺もさぁ。君みたいな可愛い子……タイプだよ」 「……?」 「ね、類にどう口説かれたの?それか……君から口説いたとか?」 「は?」 「類なんかやめてさ……俺に乗りかえない?」

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