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第269話 *

霧緒 32階の3号室。 落ち着け……落ち着け…… 先ずは詩…… 詩の確保が最優先だ。 さっきのあいつの言葉が、脳内をぐるぐる回っている。 最悪の自体を想像してしまいそうになり、怒りと焦りで感情をコントロールできなくなりそうだ。 友達と出かけることは聞いていたけど、それが屋内の弟だとは知らなかった。 予備校に向かう前、本屋でお目当ての本を探していたところに宗太から着信がきた。 宗太から連絡を貰った時まで、そんなこと夢にも思わない。 あいつは何やってんだと毒づき、呆れながら宗太と屋内と合流しここまで来た。 考えたくないけれど、最悪の予感が的中してしまったら……俺は…… 32階に到着し、3号室を探す。 廊下を走り、突き当りを曲がると目的の部屋へたどり着いた。 ……カードキーで何とか扉を開ける。 くっそ無駄に豪華な部屋で、でかい扉がいくつもあった。 「詩ーーー!!!」 一番奥に続く扉を開けるとそこには…… 大きなベッドの上に二つの人影。 仰向けに沈んでいる人物は、顔が見えなくても誰だかすぐわかる。 ……詩…… その上に覆いかぶさるように、馬乗りになっている一人の男。 この位置から詩の胸は開け、上半身が露わになっているのがわかった。 なだれ込むように侵入してきた俺たちに動揺する様子はなく、詩に馬乗りになったままこちらを見つめる男。 詩は微動だにせず、ピクリとも動く気配がない。 その詩に覆いかぶさり、これは自分の獲物だというようにこちらに視線を送り、ニヤリと笑った。 ……!!! そいつの瞳が一瞬ハッとしたのは、俺がためうことなく接近し、即効殴ったからだろう。 奴は避けようと体制を崩し、そのままベッドの脇に転がった。 とりあえずボコボコしてやろうと思った。 本気でこいつ殺す…… 「!!!!!っておいっ!!!やめろっ!霧緒っ!!いって!まったぁあぁ!!!」 「……っ……の野郎っ!!!!!」 宗太に止められながらも、当然怒りを抑えることは出来ず、もう一発ぶん殴ろうと思ったその時…… 「こ……っの……糞野郎ーーー!!!!!!!」 俺のすぐ脇から類が飛び出し、そいつのわき腹に足蹴りをした。 「ってぇ!!類っ!糞野郎はどこのどいつだ!!!って今俺のこと殴った奴!!あいつ誰!誰だ!?俺の事っマジで殴ったぞ!!」 「うっせぇ!殴られて当然だ!!!!つか他の奴の事気にしてんじゃねぇっ!お前今ここで詩に何してやがんだよ!ざけんなっ!!!!!」 「は!手出してねーよ!!お前こそ……俺以外の奴とヤりやがって!最低だなっ!マジで死ね!」 「はああぁ!?ヤってねーし!お前が死ね!!!!」 「惚けるな!キスマークあんなにつけやがって!!嘘も大概にしろっ!!」 「はぁああ?知るかよっ!!!!」 俺の怒りが収まらないのに、類とそいつとが喧嘩をはじめてしまった。 ……キスマーク……だと?

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