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第272話
類の処遇は、霧緒に一任された。
謝ったし反省してるみたいだから、許してあげたらいいのに……
俺が何を言っても無駄で、許してもらえなかった。
霧緒……本当に怒ってるみたいだし。
約束だからと言って、誰にも伝えてなかった結果、皆に心配かける事態になってしまったので俺も悪かったと反省した。
「そもそもうちの弟が100%悪いからっ!詩ー!こいつに情けはいらねぇ!!」
泣きながらキレてる玲二に謝られてしまった。
あの玲二が、荒ぶっている……
でも、これってあのバイオリンの人のことが好きだから、嫉妬させたくてしたことなんだよなぁ。
やたら俺にベタベタしてたのは、見せつけたくてわざとしてたってことか。
そう思うと、類ってかなり一途なのかな?
バイオリンの人も、俺の事を類の浮気相手だと勘違いしたからあんな行動したわけなんだし。
素直じゃないだけで、二人両想いなんじゃん。
って!類って、あのバイオリンの人と付き合ってるんだ!
スゲー!今改めてバイオリンの人を見ると、王子と思ったキラキラした面影はなく、頬は殴られて赤く腫れていて、髪はぼさぼさ。シャツは乱れて表情はギラギラとしていた。
……で、霧緒にしきりにガンたれている。
元が美しいだけあって……ひぃ……こ、怖い。
そして……
もう起きてから、ずっと霧緒が後ろから抱きしめていて離れないんだけど。
捕獲されてる感じなんだけど、恐らくここが一番安全な気がした。
なぜなら一番怖いのがこいつだからだ。
でもまさかあの飲み物にお酒が入ってたなんて気がつかなかった。
喉乾いててスゲー飲んじゃったから一気に酔いが回ったんだろうなぁ。
ここの部屋に連れてこられたのも正直おぼろ気だ。
水分補給して、今は体調も戻りつつある。
「ねぇねぇ。こんなイケメン、どうやって落としたの?」
「え、え?」
って、モデルみたいな人に半笑いされながら聞かれてしまった。
話しかけられている最中も、当然俺は霧緒の腕の中なわけで。
は、恥ずかしいす。
そんなの答えられるかー!
「あ、あの……バイオリンの人に、伝えておいて下さい」
「何?」
「あの人の演奏の後。類……泣いてた」
「……類が?」
「そう、感動したのかな?わかんないけど、俺驚いて暫く声かけられなかったから」
「……そっか……有難う。あはは、一智が喜ぶかも。伝えておく」
この成谷って人……物腰柔らかだけど、やっぱり少し怖い。
「イケメンさんの名前、宮ノ内霧緒っていうのか。本当カッコいいよね。覚えておく。ねえねえ宮ノ内くん、この可愛い子、どうやって落としたの?」
俺にも霧緒にも同じ質問してるんだけど。
俺達やたら興味持たれてるようで?
「ぶ!」
何かが気に入らなかったのか、くるっと方向転換され、鼻がつぶれるほど霧緒に抱きしめられてしまった。
「あはは!その子に手出したりしないから安心してよ。今日は本当ごめんね。俺は成谷太我 、あっちは香乃一智 って言うんだ。詳しくは玲二くんに後で聞いて。そろそろ帰らないと、具合どう?よかったらうちの車で送らせるけど」
「……大丈夫。電車で帰るんで」
「そっか」
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