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第274話
「広……!」
無駄に広い廊下を霧緒と並んで歩く。
豪華な花が飾ってあったり、高そうな絵画が飾ってあったりしてっ!!
こんな廊下歩いた記憶が……ない……
さっきいた部屋も理解出来ないくらい豪華で、あんな部屋1泊いくらするんだろうとか考えてしまった。
そんな部屋を普通に借りてるあの人達は一体何者なんだろう……とか考えてしまう。
「……」
ぐいぐいと手を霧緒に引かれ、エレベーターに乗り込む。
「……指先がまだ冷たいな」
繋がれた手を握りしめ、指先で確認された。
霧緒の手はあったかくて気持ちいい。
「うん……」
「顔色も……良くない……」
「……う、うん」
「はぁ~~まったく……」
ため息とともに抱きしめられ、頭をくしゃりと撫でられた。
自然と唇と唇が重なる。
柔らかな感触に身体がじわりと熱くなるのがわかった。
少しの間、互いの舌が絡み合う。
ぎゅっと霧緒の背中に腕を回し、しがみつくようにすれば、息が詰まるほど抱きしめる力が強まる。
んああ……切なくて……苦しい。もっと……ぎゅうして欲しい。
物足りなさを感じつつ唇が離れた。
「ん……はぁ……霧緒……ごめん……」
「…………ゆるさん」
「……ご、ごめんなさい」
「許さない」
初めて聞く霧緒の憤る声が、少し震えているのがわかった。
抱きしめ合いながら、乱れる呼吸を整えるのに深呼吸する。
「とりあえず、帰ろう。どこかに寄って、温かいものでも飲んだ方がいいか」
「大丈夫。そのまま……!っい!」
バチンとデコぴんされてしまった。
「言うこと聞く」
「……は、はひ……さーせん」
どうやら俺の意見は通らないようで、駅ナカのカフェに寄って、温かいスープをしっかり飲んでから電車に乗り込んだ。
正直、身体がフラついていたから、休憩は有り難かったな。
日は既に沈み、家路に向かう人々で車内はラッシュで混み合い、揉まれながら帰るはめになってしまった。
「あ!」
やっとお馴染みの駅に到着し、改札を通り駅前に出たときにハっとした。
「霧緒……今日!よよよ予備校ある日……」
「ん、行く前に宗太から連絡来たからサボった」
「……ご、ご!ごめんっ!!」
「今日は仕方ない。1日サボっても支障ないし。今日は俺んち直行な……OK?」
「う、うん……いいけど」
「………お前まるごと洗わないと気がすまない」
「え?」
「服も!身体も!悪臭がする!くそっ!行くぞ!!」
「は、はいぃ!」
荒ぶる霧緒に、引きずられるように家に帰った。
悪臭ですか……
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