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第280話

そりゃ俺だって、たまに……たまーにするときあるけど…… ど! ひ、人様にお見せできるもんじゃぁございません! 「ちょっと霧緒……!わ!」 するりと下に履いていたパジャマのズボンを脱がされた! 下着は先ほど洗濯してしまったので、当然履いていない。 慌ててパジャマの裾で前を隠す。 こ、こいつは本気か。 脱がされたズボンは霧緒が座っている椅子に引っかけられてしまった。 薄暗いベッドの上で正座し、どうしたらいいのか混乱状態の俺。 ここで急にしろと言われても、できるわけがないっ!萎えてるし! 「……そんな急にしろって言われても、できるわけないだろ」 羞恥心から自然と涙目になってしまう。 霧緒は無言のまま椅子に座わり、背もたれに肘をのせこちらを見つめていた。 「今日のこと、よく思い出して。誰に触られた?嫌だった?それともそうでもなかった?一智って奴に何された?押し倒されて、触られてドキドキした?ゾクゾクした?感じた?それおかずにしてできる?」 「!!!ばっ!……できるわけないだろ!」 「……じゃぁさ……詩はいつもどうやってるわけ?それが見たい」 …… そんなの…… そんなの決まってるじゃん。 薄暗い部屋の中、少し離れた椅子に腰かける霧緒の表情はここからよく見えない。 淡々と話す言葉の端端に切なさが見え隠れしていて、それが胸を締め付ける。 ……あんな奴に壁ドンされて、触られて押し倒されて、ドキドキするわけがない。 …… 馬鹿……変態。 これがどれだけ勇気がいるか、屈辱で恥ずかしいかわかるか…… 心の中で霧緒の腹をボスボスと殴りながらも、胸がきゅっとなる。 すぐ近くに数歩先にいるんだから、ぎゅってして抱きしめて欲しい。 キスしてキスして……キュンキュンしたい。 なのにそれが今はできない……してくれない。 でも…… そうだ、これが俺の罰なんだ。もしも……もしも今日の俺と霧緒の立場が逆だったら? ズキン…… ブチ切れて首でも絞めてしまうかもしれない。なぎなたあったら速攻でぶっさすだろうな、霧緒を。 ごめん……それだけ心配をかけたってことだ。 はぁぁあ……ハードル高すぎて、マジ……死にそう……だけど…… 自分の鼓動と呼吸がやたら大きく聞こえる。 暗闇から向けられる視線は、俺を捕らえて離さない。 見てる……こんなことさせるあいつがムカつくけど、いとしい相手だって知ってる。 …… ベッドの上にぺたりと座り込み…… 瞼をきゅっと閉じ、恐る恐る自分の半身に触れた。

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