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第282話

「はぁ……んぁ……」 脱力しそのままの姿勢で暫く動けないでいた。 イっちゃった…… 無理やりイった感じだから必要以上の体力を消耗してしまった気がする。 横向きに背中と膝を丸め縮こまっていると、ダルくてそのまま寝てしまいそうだ。 ……睫毛…濡れてるなぁ……泣いたのか俺……瞼が重い。 ぼーっとそんなことを考えていると、腑抜けになった身体がふわりと浮いた。 ぼやぼやと見えていた部屋の壁から、視界はあという間に天井へと変わり、そして大きな影で塞がれてしまった。 あ、息ができな…… ……!!! ぐぬりと厚い舌が口内に侵入し、俺の舌を絡めとる強引なキスだ。 それでは足りないと言わんばかりに、角度を変え思い切り吸われた。 荒い息遣いと互いの歯がカチリと音を立てる。 腰をがっしりと掴まれ強引に抱きしめられ、ごりりと硬いものが押し当てられる。 思考がついていけずとりあえず息できなくて…! ちょ!マジ死にそう!!! 「ん----!!!!」 ギブ!の合図を背中をトントン叩いて知らせる。 あ、大変……俺このまま窒息死するかも。 お父さんお母さん…… 幽体離脱寸前で、やっと唇が解放された。 零れる唾液なんてもうどうでもいいくらい酸欠状態で、必死に肺が酸素を求める。 「ごはっ!!けほ!げほっ!は……は……」 !!!! ひーー! 今度は首筋にかぶりつかれた。 予想以上の痛みが走り、言葉が出ない。 首筋にかぶりつき、耳から顎に唇を這わせると再び唇へ…… 今度は荒々しいキスではなく、かぷかぷと触れるだけの甘いキスだ。 ここでやっとお互いの視線が合わさる。 欲情丸出しの霧緒の目元は熱く切ない色味を帯びていて、ドキリとしてきてしまう。 おでことおでこがコツンと重なった。 「詩……」 「……はぁ……はぁ……」 「口尖ってるぞ」 鼻先が唇が触れそうなこの距離。 さっきの自分がした行為を思い出し、羞恥で視線を逸らしてしまう。 さっきの……さっきのさっきの……… 「……」 「全部見てたけど、脳ミソぶっ飛ぶくらい可愛かった。本当可愛すぎて、興奮半端ないんだけど」 ややややっぱりっ! 見てましたよね!!! いやー!頬擦りすんなっ! 「お、お俺の!俺の色んなものがぶっ飛んだんだぞっ!!!」 「あんな詩のアンアン可愛い姿を知ってるのは俺だけで十分。あーやらしかった」 「あ、あったりまえだろ!馬鹿ぁっ!あんなの!あんなの見せるのお前ひとりで十分だっ!!!」 やけっぱちに叫び、霧緒の腕の中で暴れてみせたけど、パシッと腕を掴まれ、俺の精液で汚れた手の平を眺めた。 「……可愛い」 俺の汚れた手を握り、ちゅっと指先にキスをした…… うっとりと愛おしそうにキスをした表情が、無駄に色っぽいんだけど。こ、こいつ!! もう可愛いの基準がわからん!!!! 俺の精液の何が可愛いんだ! 「じゃぁ、詩の希望通り……」 「え」 「沢山触ってあげようか」

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