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第286話

それから一週間ほど経ったある日。 玲二からひとつの動画が送られて来た。 「帰ったら動画送るからさ、宮ノ内先輩と一緒に見てよ」 今日学校で意味深に笑う玲二に、そう言われたのだ。 玲二が話してくれたんだけど、あの香乃一智と成谷太我って人物は、都内の金持ちが通う有名私立高校の生徒らしい。 一智とは小さい頃通っていたバイオリン教室が同じで、自然と仲良くなり、そこに幼馴染である太我も良く顔を見せていたようだ。 「当時は僕以外、皆身長が高くてさ~って低いのは今もそうだけど、圧が凄いんだよね。類と香乃くんは気が強いし、成谷くんはちょっと怖くて苦手で……だから身長高い人ってトラウマで苦手なんだよねー」 菊池先輩は別だよ!って照れながら言う玲二に俺はキュンとした。 動画の事を霧緒にも話して、今俺の部屋でその動画を見ようということになった。 温かい珈琲とカフェオレを飲みながら、二人でスマホ画面を見つめる。 「準備はいいっすか?ポチりといきまっせ」 「ん」 動画が再生される。 『お』 画面にドアップで映っているのは、玲二かと思ったら類だった。 顎に絆創膏が貼ってあり、頬には引っかかれたような傷が確認できる。 おー!類、生きてるー! 類はどうやら壁の前に置かれている椅子に座っている。 そしてカメラを弄っているのが玲二っぽい。 『はーい!ではでは、謝罪会見しまーす』 少し口を尖らせ、しゃべりだした類は、カメラに真っすぐ視線を向けた。 『えー今回は、色々とご迷惑をお掛けしまして大変申し訳ございませんでした。自分勝手な行動だったと深く反省してまーす。ごめんなさい』 謝罪会見! ……にしてはえらく棒読みだな。 まぁ類っぽいかなと思いながら、隣で一緒に視聴している霧緒の顔をそっと伺った。 ……ひぇ!コッワ!!! 若干の黒いオーラが見え隠れしていたので、慌ててスマホの画面に視線を向けた。 今のは見なかったことにしよう。うんうん。 個人名は出てこないけれど、恐らくこの謝罪は付き合っているという恋人の一智って人と俺… それと隣の霧緒に向けられているのだと感じた。 『……えーというわけで、どうかもう許してやってください。俺としては、今後ともより良いお付き合いができたらいいなぁと思っている次第でーす。…って言っても、まぁ信じてもらえないだろうから?反省してるぜ!ってのを俺なりに表現したいと思いまーす』 表現? そしてにょきっと脇からアップで出てきたのは玲二だ。 玲二……えらく楽しそうで、顔がめちゃくちゃニヤついている。 そのニヤついてる表情が不本意ながら類にそっくりだと思ってしまった。 やっぱり兄弟!!玲二ー!その顔やばいぞー! 類にふわりとマントのようなものがかけられ、ウィイインという機械音が聞こえた。 類は無表情で、そのまま座って動かない。 『じゃ、いっきまーす!』 類の横に立っている玲二の手にはバリカンが握られていて、類の生え際から一気に剃り上げてしまった! ああああ!!!! 「おぉ……ヤバ」 隣から聞こくる声に同調し、その模様を見続けた。 容赦なくどんどん刈られていく…… あわわわ~ あの……あの癒しの玲二くんが、悪魔に見える。 無表情というか仏頂面の類に反し、玲二はとても楽しそうで、笑いながらバリカンを操っていて、あっという間に類の頭を丸坊主にしてしまった。 『……さみぃ』 『ぷ……ぷぷぷぷ!!!!!あはははは!!!』 『玲二うるさっ!』 剃り終わって、くりくり頭をぶんぶんと振る類。剃りあがった頭は見事に青々としていた。 『ほら、これでいいだろキレイサッパリだ。というわけで謝罪会見を終わりまーす』 『あはははは!類お前っ!今日からバイオリンからバッドに持ち替えろっ!』 ひぃひぃ笑う玲二の声を最後に画像はそこで終了した。 …… 「み、見た?」 「ん、見た」 「……で、どうなの?」 スマホをテーブルに置きながら、霧緒の顔を覗き込んでみる。 「言い方が相変わらずな感じでムカつくけど、あいつの性格上あの言い方が精一杯なんだろう。反省している姿勢をわかりやすく伝える手段として断髪を選んだのは潔くて気持ちがいいかな」 「ふむ」 「って、あれやれって言ったの俺なんだけど。マジでやったな」 「はぁああああ!!???」 「屋内が何日か前に聞きに来たんだ。類を煮ますか?焼きますか?って。本気で反省してるなら頭丸めてみろって言ったけど、やってのけたしな。許してやるしかないよなぁ」 宮ノ内式お仕置きィ!!!

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