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第288話

そんなワイワイと賑わう家庭科室を、こっそりと眺め思案する人物が一人……あ、二人?いたらしい。 「ふむ……これはどうにか、いい方向に持っていけそうね」 「おー!萩生荒ぶってるなぁ。あいつ家で料理でやるって言ってたし、女子力あるしな。あ、怒りながら自分でワッフル作り始めた。あはは」 「うちのクラス女子たちが、あんなに不器用だとは予想外だったわ。でもそのおかげで萩生を自然な形であのメンバーの中に加えることができるっ。女子グッジョブ!屋内は萩生がいれば道連れできるし、輪にぶち込めるわね」 そう話すのは、学園祭実行委員の腐女子の二コラこと秋山絵里。 一緒にいるのは腐男子のゆっぺに恋する男、なっちこと仲島七空だ。 「萩生たちの色気なしの着ぐるみとかゲームコスとか、興味ないんだよなー」 「同意。で、なっち、ゆっぺは何に仮装しようとしてるのよ?」 「金田一耕助」 「はっ!……地味!!!!」 「助清と迷ってた……」 「犬神家かよっ!!」 「あいつ腐男子だけど、名探偵も好きなんだよなぁ。せめてマドンナ役にしろって言ったんだけど、聞き入れてくれなかったわ」 「ゆっぺ……素材は悪くないんだから、もうちょっとそそられるコスしろって感じよね」 「うんうん。マジ俺得な格好して欲しい」 「本当!まぁ、自覚ないのがあの子の面白いところなんだけど、なっちが可哀想になってくるわっ!」 「だろ!?二コラも気がつくだろ?俺結構アピールしてんのに、あいつ全然気がついてないんだぜ、俺の気持ちっ!……酷い男だよな」 「ま、鈍感過ぎる男。それがゆっぺだから、仕方ないわ。まぁ、ゆっぺのことはなっちに任せようと思うけどどう?」 「それについて、ちょっとニコラに協力お願いしたいんだけど……コソコソ」 「……ふむふむ。OKそういう対応しておくわ」 「よろしく!」 「ふふふ……せっかくの学園祭。実行委員の権力振りかざして成功させてやるわ!クラスの男子は他のクラスよりも可愛く!そしてクラスの黒字!!優良クラス目指してっ!!」 「二コラかっこいー!よ!最高!!」 そんなことを、うちの実行委員が目論んでいるとも知らず、学園祭の準備は着々と進み、校舎内に普段の面影はなく、各学年各クラス力作のオブジェやポスターや装飾で溢れていた。 もちろん校舎の外も様変わりしていて、生徒の興奮はMax状態。 「玲二~どこから回るか?」 「んー行きたいとこ、いっぱいあるなぁ。迷うね」 「んだねー!まずは3年のとこからスタート?」 「うんうん!行く行く!」 ワンコの着ぐるみと、魔導士のふん装を予定している一年の男子高校生二人は、飽きることなく学園祭のパンフレットを眺める。 学園祭当日を、ワクワク心待ちにしたのだった。

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