288 / 506
第288話
そんなワイワイと賑わう家庭科室を、こっそりと眺め思案する人物が一人……あ、二人?いたらしい。
「ふむ……これはどうにか、いい方向に持っていけそうね」
「おー!萩生荒ぶってるなぁ。あいつ家で料理でやるって言ってたし、女子力あるしな。あ、怒りながら自分でワッフル作り始めた。あはは」
「うちのクラス女子たちが、あんなに不器用だとは予想外だったわ。でもそのおかげで萩生を自然な形であのメンバーの中に加えることができるっ。女子グッジョブ!屋内は萩生がいれば道連れできるし、輪にぶち込めるわね」
そう話すのは、学園祭実行委員の腐女子の二コラこと秋山絵里。
一緒にいるのは腐男子のゆっぺに恋する男、なっちこと仲島七空だ。
「萩生たちの色気なしの着ぐるみとかゲームコスとか、興味ないんだよなー」
「同意。で、なっち、ゆっぺは何に仮装しようとしてるのよ?」
「金田一耕助」
「はっ!……地味!!!!」
「助清と迷ってた……」
「犬神家かよっ!!」
「あいつ腐男子だけど、名探偵も好きなんだよなぁ。せめてマドンナ役にしろって言ったんだけど、聞き入れてくれなかったわ」
「ゆっぺ……素材は悪くないんだから、もうちょっとそそられるコスしろって感じよね」
「うんうん。マジ俺得な格好して欲しい」
「本当!まぁ、自覚ないのがあの子の面白いところなんだけど、なっちが可哀想になってくるわっ!」
「だろ!?二コラも気がつくだろ?俺結構アピールしてんのに、あいつ全然気がついてないんだぜ、俺の気持ちっ!……酷い男だよな」
「ま、鈍感過ぎる男。それがゆっぺだから、仕方ないわ。まぁ、ゆっぺのことはなっちに任せようと思うけどどう?」
「それについて、ちょっとニコラに協力お願いしたいんだけど……コソコソ」
「……ふむふむ。OKそういう対応しておくわ」
「よろしく!」
「ふふふ……せっかくの学園祭。実行委員の権力振りかざして成功させてやるわ!クラスの男子は他のクラスよりも可愛く!そしてクラスの黒字!!優良クラス目指してっ!!」
「二コラかっこいー!よ!最高!!」
そんなことを、うちの実行委員が目論んでいるとも知らず、学園祭の準備は着々と進み、校舎内に普段の面影はなく、各学年各クラス力作のオブジェやポスターや装飾で溢れていた。
もちろん校舎の外も様変わりしていて、生徒の興奮はMax状態。
「玲二~どこから回るか?」
「んー行きたいとこ、いっぱいあるなぁ。迷うね」
「んだねー!まずは3年のとこからスタート?」
「うんうん!行く行く!」
ワンコの着ぐるみと、魔導士のふん装を予定している一年の男子高校生二人は、飽きることなく学園祭のパンフレットを眺める。
学園祭当日を、ワクワク心待ちにしたのだった。
ともだちにシェアしよう!