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第289話
そして、学園祭当日。
「ごーめーんー!折角萩生が教えてくれたのに、無理ー!できないよー!」
「え」
「どうしても萩生が作ってくれたみたく美味しくできなくて。何でこんなカチカチのワッフルになっちゃうのー!」
「ええー!」
学校に到着早々、女子たちに泣きつかれてしまった。
早朝から集まり、準備に取り掛かったものの、上手く生地作りができないという。
おーい!なんだとー!?
「萩生!昼まででいいから、調理場手伝ってっ!!あ、屋内も助手でお願い!どうせ二人一緒にチラシ配りでしょー!」
「えー!!なんで僕も?女子皆不器用すぎじゃ……あ、いやっ!なんでもないっ」
絶望的に不器用な女子たちは、ウルウルと瞳を潤ませ懇願してくる。
正直面倒くさい。
何で俺たちがー!俺たち担当違うしー!
しかし……この女子たちの全力のお願いを断ったらどういうことになるのか、本能的に危険信号が鳴り響いている。
考えただけでも、後が怖い。
「ひ……昼までだぞー!」
「「きゃー!有難う!助かるっ!!」」
やれやれと諦めながらも、少しほっとしている自分がいた。
実際クラスの女子たちの手際の悪さ、センスのなさは壊滅的で、申し訳ないけどびっくりしたんだ。
前回完成したものも、商品として出せるギリギリのラインだった。
そして何よりも、俺が作った方が断トツで美味しい!!!
胸を張っちゃう自分がいるー!
「え、何協力OK?萩生屋内助かるわー!有難う!じゃ、二人ともこれに着替えて。その衣装だと調理に不向きで危ないし汚れるから。終わったら、また着替えたらいいわよ」
実行委員の秋山から紙袋を渡された。
「うえー!なんだよこれ!!女子が着るものじゃん!ジャージでいいだろ!」
「調理担当は、全員この衣装で合わせることになってるの!ジャージなんか着て水をささないでよね。学園祭なんだから、ノリよくいきなさいよ!ノリ大事!」
秋山怖い!
そして……なんかこんな感じの前に見たことあるー。
渡されたのは恐らく?確実に白黒のメイド服。
「おぉ!メイド服だ!可愛い!」
ん?隣の親友を見れば、好奇心に満ちた瞳で、ひらひらするメイド服を眺めていた。
「玲二くんは何気にこういうの女装とか興味あったり?」
「え、あ!ないない!女装はないよ!でも興味というか、メイド服ってさ、ゲームの中に装備であるんだよ。期間限定イベとかで。男も女もどちらも装備可能なんだ。それ思い出しちゃって」
「へーそうなんだ」
「こういうのって、イベント事じゃないと着れなよね!」
……イベント事ではなく、プライベートですでに着ている俺って。
メイド服ではなかったけど、同じようなものだ。
あれはアリスだっけ?あの時はあれ着てめっちゃエッチしちゃったんだよな……あら、やだ!スケベ!
それに反して、キラキラした瞳で純粋に楽しそうに話す玲二が眩しくて、直視出来ない。
ああ!俺って汚れてる!
「でもさー玲二。菊池先輩が見たらどう思うかな?」
「え?ごめん。何て言った?」
「あ、あー!!なんでもないっ!そうだよなー!こんな時しか着れないものな!玲二!男らしく着替えようぜ!うんうん!着てみたらいいよ!」
そんだ!これは菊池先輩に、可愛いメイド服姿の玲二を見てもらうチャンスかもしれない!!
これは詩先輩の腕の見せ所なのでは!?
類の事件の時、折角の二人の休みを台無しにしてしまって迷惑かけたし、二人に何かお礼がしたい。
でも俺もメイド服を着ないとだから、霧緒が何ていうかな。
内緒にしたら怒りそうだもんなぁ。
うん、とりあえず!連絡しておこう!
よし!よーしよし!
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