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第290話

なっち 「……」 「俺と二コラは同意見だ。ゆっぺ」 「やだね」 「それは脱げ」 「や、やだ!」 「その袴は明らかにゆっぺには大きい。乳首見えてるぞ」 「え!!!」 ゆっぺが親戚から借りたという袴は、古くて渋くて確かに金田一耕助らしいものだった。 でも小柄のゆっぺには、サイズが大きい。 乳首見えたってのは中に体操服着てるから嘘だけど、絶対絶対こっちの方がゆっぺには似合うっ! 「俺の仮装の衣装、家に忘れてきちゃってさー。そのことニコラに伝えたら、ならばこれを着ろって。だけどほらーこれ見てよ。明らかに小さくてサイズ合わないんだよ。だからこっちをゆっぺが着てくれると有難いんだけど。で、俺にその袴小道具一式貸してよ」 「いやだよ!なんで俺がこんなの着なきゃいけないんだよ!女子に着せろよー!女子に!」 「女子はもう皆衣装に着替え済み!俺が着たら背中裂けるし、ゆっぺと交換するしかないんだよ!制服とかジャージだと、二コラが怒るんだよー!あいつ先生より怖いぜ。あ、ちなみに萩生と屋内もこれ着てワッフル作るらしいぞ!」 「え!萩生と屋内が!?何で?あいつら用意してた衣装あったじゃん!」 「急きょワッフル作りに任命されて、女子に紛れてやるらしい。皆さー学園祭盛り上げるのに頑張ってるんだよなー。偉いよなー!あー萩生と屋内のメイド姿、近くで見たいなー!」 「お、おう見たいな……!に、似合いそうっ」 お得意の腐った妄想でもしているのか、ゆっぺの表情が赤くなっていて可愛い! そして俺はゆっぺのメイド服姿が見たいんだ!って言いたかったけれど、グッと堪えた。 そんなこと言ったら、少し開いた貝がまた閉じてしまう。 「あーあ、二コラに怒られるなぁ。俺自由時間なくなるかもなー。折角ゆっぺと色々回るの楽しみにしてたのに……残念。あ、一度衣装取りに帰るか?でもそうしたら昼過ぎるかもだしなぁ……」 「……」 よしよし、もう一声だ! 「あーいたいた!坂口ー!」 聞いたことのある陽気な声が聞こえ、その方を振り返ると…… お!! メイド服姿の萩生と、屋内がずんずんとこちらに歩いて来るではないか! わー!!うける!着こなしてるー! でも下のフリルスカートの下から覗くのはうちの学校の紺色のハーフジャージ。 でそこだけ……現実感あるー。 「は、萩生と屋内!すっげー!似合う!!」 顔を赤くしながら興奮気味のゆっぺは、一気にテンションが上がったみたいだった。 「だろだろ!こういうのはノリだぜ!ノリ!で、坂口(ゆっぺ)材料の買い出し担当なんだろー?冷蔵庫にしまってあるらしい、材料どこにあるかわかんなくてさー。一緒に来て欲しいんだよー。他のクラスのも入ってるから、ごちゃごちゃしててわかんねー」 「萩生ー!ゆっぺがこれ着てくれなくて困ってんだよー!何か言ってやってー」 「ん?このメイド服、俺たちのと同じじゃん。一体これ何着用意してんだよ。坂口もワッフル組に参加なの?」 「え!あ!いやっ!そんなんじゃ!」 「僕らさ、昼までワッフル組なんだけど、坂口もやろうよ?男子仲間多い方が心強いし、詩の作ったワッフル、凄い旨いよー!」 「え、ワッフル組?なな仲間!?……お、俺も参加してもいいの?」 「おー!やろやろ!女子より頼りになりそうだし!ほらほら、さっさと着替えてこーい!」 「わ、わかったーーーー!!」 大好きな萩生&屋内が声をかけてくれたおかげで、ゆっぺも乗り気になったようだ!!!! お前ら最高!!ナイスだぜ!!!!

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