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第292話
「これで、よしと……うむ」
ポチポチっと霧緒に送信。
こういう際どいことは前もって霧緒に報告だ。
これってあいつのアンテナに引っかかる気がするしな。
直ぐに『了解しました』のスタンプが送られきたし、これで大丈夫。
「よーし!じゃ、頑張るぞー!」
「や、やっぱりこれって恥ずかしいくねー!?何かわさわさする」
恥ずかしそうにもじもじしてるのは、着替えたばかりの坂口(ゆっぺ)だった。
サイズはピッタリだし、ウムウムなかなか似合ってるんじゃないか?
仲島(なっち)がやたら喜んで、パシャパシャスマホで撮ってたのが面白かったな。
坂口に抱き着いて殴られてたけどさ、本当仲いいよな~こいつら。
「まぁちょっと恥ずかしいけどさー。周り見ると皆それぞれ仮装してるから慣れてくるよ。詩、生クリームってこんな感じでいいの?」
「おー玲二いい感じ!」
「本当!屋内器用だな!凄く美味しそう!ワッフルいい匂いしてるから、お客さん沢山来そうだな」
「だなだな!」
「女子に負けない女子力!本当お三方助かるわ!調理場の主力として頑張って頂戴!」
そう言いながらカシャリとスマホを鳴らすのは、魔女に扮した秋山だ。
もともと美人顔だから、魔女の仮装が良く似合っていた。
今撮ったスマホの画像を確認しているようだ。
「やだ……凄くイイ!萌える!」
「二コラ!それ俺のにも送ってっ!!絶対!」
「はいはいわかってるわよ。後でね」
ハァハァと興奮しながら坂口がそこに加わっていて……
何でそんなにテンション高いのか良くわからないんだけど。
二コラは秋山のニックネームみたいで、坂口もそう呼んでいるみたい。
坂口と秋山って、タイプは違う感じなんだけど、良く一緒にいて仲いいよな?
話も合うみたいだし。
「二人って、付き合ってるの?」
思わずそう聞いてしまった。
「「……は……」」
「そんなわけ……」
「……ないじゃん?」
あ、あれ?
全然違った?
可哀想な子を見る様な目で俺を見ている!
しかも二人で揃って見つめないでくれっ!
勘違いしてごめんなさい!!
「どうしたら私とゆっぺがつき合ってると思うのかしら?」
「そうだそうだぁ!!」
「そんなことより、萩生の方が気になるけどー?最近垢ぬけたって巷で噂だけどどうして?ひょっとして、恋でもしてたりするの?」
「え」
「それか……もしかして、仲良しの宮ノ内先輩と……何か進展があったとか」
「え”……ななない!ないよっ!なんだよそれ!」
秋山の瞳がキラリと光る。
恋というかもっと濃いぃことしてる!
なんて心で呟いてしまったけど、当然それは秘密なので、答えることができなかった。
顔を引きつらせ、瞬き連射で絶対怪しまれたと思うんだけど、それ以上は深く突っ込まれずにすんだ。
秋山は……秋山は怖い。
何か見透かされているよな気がした。
本当に魔女みたいだ。
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