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第293話

準備に追われていたら、あっという間に学園祭がスタートしてしまった。 窓から下を眺めると、心待にした人々がどんどん増えていくのが良く分かる。 「よく見たらうちのクラスの男子ってさ、皆仮装してるけど、女装率高くね?」 「え……そうか?」 言われて周りをみれば、チャイナ服を着てたり、ナースっぽいのだったり、魔女の仮装も何人かいて確かにそうかもしれない。 へーうちのクラスの男子、皆女装願望あるのかなー?おーあいつ腹見えてるけどいいのか? まさかこれも秋山の計画だとはクラスの男子はつゆ知らず。 しかし確実にコントロールされており、知らず知らずのうちに、クラスの男子のほとんどが女装コスをさせられていた。 その対象にならない奴もいるけど…… 「なぁ!これ、地味だけどカッコ良くね?」 そう言いながら現れたのは、袴姿にチュウリップ帽を被った仲島だった。 アンティークなトランクを持ち下駄まで履いていて、クラシカルな名探偵になりきっていた。 おー!似合ってる! 「おー!仲島いい感じじゃん!!」 「本当だー!昭和って感じ!」 笑うと八重歯が印象的な仲島を、ぼーっと隣で坂口が無言で凝視している。 自分が着たかった仮装を、取られてしまった感じだからショックかな? 「……なっち……」 「……は、はいぃ…」 「す、すっげーーーいいっ!!なっちカッコいい!!」 おおお! ゆっぺ怒っているかと思ったら、めっちゃ笑顔で親指を立ててグーサイン! 仲島もメチャクチャ嬉しいみたいで、くるくる回ってる。 仲島ってもっとクールな奴かと思ってたけど、面白いやつなんだなー。 「あー!でも俺も着たかった!!マジ着たかった!!もうーーー!」 「まぁまぁ、ゆっぺも似合ってるからそのメイド服。後で一緒に撮ろうなー!じゃ、皆頑張ろうぜっ!」 それから調理場も徐々に忙しくなり、暇な時間はほとんどなく、ひたすらワッフル作りに集中した。 女子たちも段々コツを掴んできたみたいで、美味しそうなワッフルが次々と焼き上がる。 列ができてるし、結構忙しい!! ホール担当の女子たちも、忙しそうに店内を切り盛りしていた。 「やだー!萩生可愛い格好してるじゃん!全身見せてよ!」 「ワッフルいい匂い!ヤバいんだけどー!」 「これあげるー!絶対似合うよ!」 買いに来てくれた女子たちが、お花紙で作った花を無造作に俺の頭にのせていく。 ってその花は、廊下の壁にやポスターに綺麗に飾り付けられてあるもので、正直迷惑なんだけど…… 「いらねー!」 はじめはウザくて取っていた花だけど、買いに並んでるふざけた女子達は、次々と紙でできた花を頭に飾り付けていく。 そうなったら払うのも面倒くさくなり、放っておいたら頭が華やかになっていってしまった。 「……これって何なんだ。完全に遊ばれてる」 「恥ずかしい!恥ずかしい!」 同じく頭に花を飾られて混乱してる玲二と、ひたすら恥ずかしそうにしている坂口。 「はん、お前ら女みてーだな」 「チンコついてねーんじゃねぇの?あはは」 と、まぁ当然そんな冷やかしを言ってくる奴らもいるわけで。ついてるっつーの!! 「……ざけんなくそが」 「ひえー!怖いー!ごめんなさい!ごめんなさい!」 意外と毒を吐く玲二と、ひたすら怖がっているゆっぺがいた。

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