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第297話
保健室に近づいてくる気配は二つ。
微かに話し声が聞こえたけれど、男か女か分からない。
カーテンの裏は、霧緒の待機スペースになっている。
椅子がひとつ置けるくらいで、当然二人では狭く、隠れるのに必死だ。
はーそれにしても、さっきはマジビックリしたー。
玲二と理科室で別れ、進んで来たもののお化け屋敷らしく辺りは暗く狭くて、すぐ不安になってしまった。
え、これはやばーい。
怖くないと思っていたけど、結構ビビってる自分がいる。
保健室はここかな?
一人になったら急に怖さが増して来てしまいドキドキが止まらない。
不意をつかれ、腕を掴まれた時は驚きすぎて本当に死んでしまうかと思った。
まさかそれが霧緒だとは思わず。
血塗れじゃん!顔の半分が血糊メイクされていたので、雰囲気にのまれていたのもあり、男のクセに叫んでしまった。
クソ……メイクのインパクトが大きすぎて、眼鏡してるのも気がつかなかった!
怖いからそのメイク落とせー!
すぐにメイド服のことを聞かれ、ちょっとご機嫌ななめなことに気がつく。
ちょっとというか結構?んん?
こういう格好好きなはずなのに、あんまり嬉しそうじゃないのはどうしてか?
でもその割に、俺のスカートの中に手を入れて腰の辺りを触り始めるときの顔は、いつものエロ顔になっていた。
そんなこんなしていたら人の気配……
カーテンが揺れてしまわないように、霧緒に身体を密着させて抱き着いた。
「どうするん……」
霧緒の肩に顔をのせたまま不安になり、こっそりと呟いてみた。
一瞬霧緒の身体が後ろに引いたと思ったら、イケメン顔が目の前に現れた。
顎を指で固定され、抱きしめられたまま二人で見つめ合う。
顔は血糊いっぱいだけど、その瞳はいつもの霧緒で目が離せない。
あ、キスされる……そう思った瞬間だった。
「はーい!ストーーーープ!!」
嬉しそうな菊池先輩の声がして、カーテンが勢いよく開けられた。
「わ!」
「……」
「いやー!間に待って良かったわ!これで不純な行為を未然に防ぐことができた!」
スゴーーーく楽しそうな菊池先輩と……
「べ、勉強になります詩先輩っ!」
その後ろに隠れて、こちらをガン見してる玲二。
「……ち」
舌打ちしながらも、スカートの下で腰を撫でるのをやめない霧緒……
「あは。あはは……」
そのお膝に座り、霧緒に抱き着いてる俺。
と、とりあえず笑っておこうかな!!
「もう休憩の時間だから人来ねーよ。お二人さん」
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