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第300話
それから、当然なんだけど、俺は霧緒に丁寧にお着換えをさせてもらった。
ワンコのあれにです。
「どう?」
「ぷっ……う……うん。これはこれでまた違う可愛さがあっていい……かな」
「おーー!」
かわいいワンコの顔のフードがついた着ぐるみを着せてもらい、やっと予定通りの仮装を楽しむことができる!
ポンポンと頭を叩かれた。
「で!次からこういうのは、俺と二人きりの時に着ること。これは捨てるか?」
脱いだメイド服を摘まみながら、白衣姿の霧緒が呟く。
勿論、眼鏡着用でいつもとひと味違う雰囲気だ。
「いや、それ洗って返さないとだから!わかったからゴミ箱に捨てんなっ!」
「お、それ着て動くとなんか面白いな」
「え、面白い?」
「んー……犬っぽくていいってことかな」
「え!そ、そう?!そうかなっ!」
そう言われると、嬉しくてついつい無駄に動いてしまう!
そして着替えを済ませた後、二人で校内や校舎の外を見て回った。
当然周囲がうるさくなるのは当たり前で、目立つ霧緒の周りには女子だらけだ。
慣れているとは言え、他校の生徒も混ざっていて、改めて霧緒の人気ぶりを目の当たりにした気がする。
「キャー!宮ノ内先輩!そのお姿!ほ、保存版っ!!」
「え、萩生くん?その何格好!」
「さっきメイド服着てたのに、今度は着ぐるみー?かわー!」
「え、誰誰?この着ぐるみくん顔ちゃんと見せて!」
……って!俺のことはいいから!
「……お前ら邪魔だからついてくんな」
「「えーー!」」
折角の学園祭なのに、外野がうるさくてのんびり回れない。
霧緒が女子たちをしっしと追い払った。そのおかげで少し移動しやすくなったかな。
「……何か……頭にくんなぁ」
ボソッと隣で愚痴を言っているのが聞こえた。
「相変わらずの人気だな。まぁ、慣れたけどさ」
「……」
「あ、あそこ空いてる。座って食べようぜ」
「ん」
体育館脇に臨時で設置してある休憩用の椅子に座って、購入した焼きそばや唐揚げにお団子、ワッフルとドーナツをテーブルに広げお昼ご飯だ。
「買いすぎだろ」
「そう?腹へったー。あ、これこれ!食べて」
霧緒に取っておいたお手製ワッフルだ。
当たり前だけど、時間が経っていて冷えてしまっている。
できればできたてを食べて欲しかったなぁ…
「お持ち帰り用にしたから、生クリームは邪魔でつけられなかったんだけど美味いと思う」
霧緒がワッフルにパクリとかぶり付く様子を、少しドキドキしながら見守った。
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