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第306話 クリスマス編5
「凄い綺麗なホテルだなー」
「一等地に建ってるだけあって、立派だとは思う。応対も丁寧だったし」
「おー!霧緒、ほらこれ日本庭園があるらしいぞここ!探検行こうぜ」
エレベーターに乗りながら、ホテルのパンフにある案内図を眺めると、色々な施設があってワクワクしてくる。
「そうだな。庭が自慢らしいし、後で行ってみるか」
「おし!」
部屋に着くと、ダークブラウンを基調とした落ち着いた色調とモダンなインテリアが調和した部屋だった。
間接照明を活かし雰囲気がよい。
観葉植物やゆったりとしたソファが置かれていて、なんとも癒しの空間が広がっていた。
「おー!オシャレーーー!」
「部屋も綺麗だな」
「うおー!ちょっとそこのお兄さんこっち来て!景色ヤバーー!!」
窓の外からは都内のあのビルとこのビルが見え、以前二人でデートした電波塔が良く見えた。
後ろから抱きしめ、俺の肩に顎をのせた霧緒も感心したように外の景色に見入っていた。
「おー!すげぇ。この部屋当たりっぽいなぁ。……確かに夜景が綺麗に見えるかも。日が暮れるのが楽しみだな」
「なんか大人になった気分だー」
「……大人……」
「何か……言いたいことが?」
「いや、ない。ほらこっち」
「おおベッド!デカいな!」
「やっぱりキングダブルにして正解だな。良く弾むし」
「キングダブル……まじカップルみたいだなエロー」
するとまだリュックもおろしてない俺をベッドに引っ張ると、そのまま強引に押し倒された。
「カップルみたい……じゃ、ねーだろ?」
リュックが邪魔で変な体制で寝転がる俺の上に、覆いかぶさり囁く霧緒のそのセリフは、不思議と俺から本音を引き出してくるから本当ズルい。
「………カップルみたいじゃなくて、カップルです。はい、めっちゃラブラブカップルす」
「よし」
ふっと身体にかかる重みがなくなり、心もホッとする。
……こんな弾むベッドマジやらしいぞ。
そう思うと急にドキドキしてきてしまう。
今夜ここで霧緒と寝るんだ。
寝るだけじゃなくて、あんなことこんなこと……絶対する。
ああ……!
ちょっとっ!俺ってばそんな先の妄想までしてっ!!
鼻血……でそ……どうしよう。
なんか本当に贅沢で……
特別すぎて今日は夢でも見てるんだろうと思った。
それから背負っていた黒いリュックをおろしコートも脱いで、しっかり風呂場からトイレ、クローゼットの中や冷蔵庫まで好奇心垂れ流して見てしまう。
洗面所のアメニティも完璧です!
興奮おさまらず、ふらふらと窓の外を眺めてる彼氏のところまで行き、ギュッと胸に抱き着いた。
「どうした?」
「こ……興奮した……田舎者には贅沢で。ちょっと落ち着かねば……」
「はいはい」
「……次は……次は金払って来るぞ。クソゥ……」
「じゃ、次はもっといい部屋な」
「お、おおう」
くだらない会話のやり取りがとても心地よくて、自然と元気になってくる。
霧緒の手が優しく頭を撫でて抱きしめてくれた。
このぬくもり、この空間は俺の特等席だ。
俺限定の癒しスポット!
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