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第312話 クリスマス編11 こちらフロント②
こちらフロントでございます。
フロントなのですが、ただ私今フロントにはおりません!
部下を置き去りにして来てしまいました。
大丈夫でございます!優秀な部下ですから、私が席を外していても、何の問題もありません。
実は先ほどお見えになられた、萩生様宮ノ内様をちらっとお見かけしたので、居ても立ってもいられず、こっそりと様子を伺いに庭園まで来てしまいました。
当ホテル自慢の日本庭園で、この時期年明けまでライトアップしておりまして、それはそれは幻想的で美しいのです。
宿泊客だけでなく、この庭園を見るためだけにいらっしゃるお客様も多々おられます。
薄暗い夕刻の中、キラキラと色とりどりにライトアップされる木々や池や橋が、それは見事で素敵なひと時を過ごせること間違いなし!
「……ね、あそこにいる人、凄くカッコよくない?」
「思った思った誰?モデル?」
……
……その方はもしや……
通りすがり、興奮気味の女の子たちが歩いていらした方に視線を向けると、思った通り宮ノ内様の姿がありました。
遠目からでもいい男です。
……10年後が楽しみっていうほど……
そして少し離れた場所で、スマホで写真でも撮っているのかもう一人の男の子……萩生様を発見。
見どころなスポットをカシャカシャと撮っている姿が一生懸命で可愛らしい。
何を話しているのか、ここからは聞き取れないけれど、二人でくすくす笑い合ってる姿がとっても微笑ましいです。
クールな印象の宮ノ内様も、笑うとちょっと子供らしい表情になるのにキュンキュンします。
もしかしてかなりレアな笑顔だったりするのかしら、そのうちスマホで何かを見せ合いっこしているのか、萩生様が慌てているのがわかりました。
じゃれ合う感じは普通の高校生男子。
とても仲が良いのが良く分かる。
やだ……
私どんだけ気になってるの……
すれ違うお客様には、それとなく用事があるふりをし、勿論聞かれれば庭園のご案内やイルミネーションの説明などしつつ違和感がないように応対。
そこまでしてあの子達を見に来てる私っておっかけー!!
しかしさすがにずっとここにいることはできないので、少し様子が見れたことに満足してフロントに戻ることにした。
ち……仕方ないか。
そして最後にひと目と思い二人の方を見やると、なんと……宮ノ内様が自分がしていたマフラーをふわりと萩生様の首に巻いてあげているではないですか…!!!!
きゃーーー!!!
見た!
私見たっ!!
「……鼻赤いって」
「まさかこんなに冷えるとは……あったかいの飲みたい……ズズ」
二人が私の後ろから歩いて来られるので、そういう会話が聞こえてくる。
……脳内では今目撃したワンシーンでいっぱいだった。
あんなの!普通のカップルがやってもここまで興奮しないわよ!
腐ってる?私やっぱり腐ってる!
っていうか普通にそんなことができる宮ノ内様やっぱりイケメン!!
で!
男同士でマフラー巻き巻きやる!?
やっぱりそういう関係なのかしら?今夜エンダアァァァー!!!な感じ?
庭園からロビーに繋がる大きなガラス扉を開きながら……
「温かいお飲物でしたら、カフェに御座います、ホットチョコレートがおススメですよ」
そう笑顔で二人にご案内してみた。
「え、ホットチョコレート?」
「寒い時に飲むと身体が温まりますので、私のおススメです。甘さ控えめですので飲みやすいかと。もしよろしかったらどうぞ」
……萩生様を見ると、寒さのせいで確かに鼻が赤い。
暖かそうなマフラーに顔を埋めているけれど、この子もとっても顔立ちの良い男の子だと思った。
隣にいる宮ノ内様の存在感が強くて、そっちに目が行きがちだけど、この子も十分整った顔立ちをしている。
童顔で幼く見えるせいか、可愛いって表現がぴったりだ。
「おススメだってよ?」
「ん、……飲みたいんだろ?」
「飲みたい!行こうぜ!ありがとうございます!」
ひぃ!!!
ぎゃんカワ!!!
何なの……萩生様のあの笑顔ーー!!
実家のワンコにするように、わしわしと撫でてあげたい可愛らしさ!
またその隣にいる宮ノ内様のクールさといったら。カッコ良すぎる彼は、人を気軽に寄せ付けないような独特の雰囲気があるので、話しかけるのにもなかなか勇気がいる。
そんな雰囲気を全く気にしない、萩生様の柔らかな明るさは魅力的で、人を惹き付ける気がした。
そして私もその一人。屈託のない無邪気な笑顔は、ずっと見て居ても飽きない。
全くタイプの違う二人がとてもお似合いで、本当私ここで何やってるんだろう……
わ、私……ちょっとスタッフルームにさがって、気持ちを落ち着かせないと……
はぁ……もたないわ……
私鼻血出てないわよね?
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