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第320話 クリスマス編19
……
……
も、もちっと…とは…
どれくらい……
ですか……
「し、死ぬ…」
今……何時なんだろう……
まだ朝ではないような気がするけど、起き上がりたいのに力が身体に入らない。
それでもうつ伏せのままもそりと頭をあげて、時間の確認をした。
4時半……少し寝てた気がするけど、気だるさが半端なくて目が覚めてしまった。
あれから……あれから?
霧緒が満足するまで、抱かれて抱き潰された。
もちっとどころじゃなかったぁ……
ほとばしるエロい笑顔は聖なる悪魔で、魔界に引きずり込まれた俺は骨の髄までしゃぶられた気分だった。
……
す、凄かった……
泣いても離してくれなくて、最後の方は乱れすぎて……よく……覚えていない。
「喉……渇いた……」
何とか重い身体を起こそうとした時、後ろにぐいぃと引き寄せられてしまった。
「ふんぎゃ!」
「……どした……」
「お、起きてたの?」
「……今……起きた」
完全に腕の中できつく抱き締められ息苦しい。
二人裸のままで、素肌の感覚にドキドキしつつ首筋に顔を埋められ、手が腹を撫で脚が絡み……
抜け出せない……
「何か飲みたい……」
「俺の……飲む?」
ニヤニヤと笑い、すりりとわざと腰を押し付けてくる!
「はぁ!なんだそれっスケベ!!」
「そうだよ。スケベだよ。詩もスケベじゃん?……凄い……気持ち良かった…」
「……うぐ」
だから耳元で話すの禁止だって!って思うくらい霧緒の低めな声が心に響いてきてドキドキする。
「大丈夫……俺エッチな詩大好きだから」
「う、うん……あ、そりゃどうも……」
「詩」
「……ん」
「メリークリスマス」
あ、そっかもう25日か……
「メ、メリークリスマス。霧緒……飲み物取ってきて?俺身体痛いよー」
「……水でいいか?」
「よいよい!」
暖房が効いているので、汗をかいているのと乾燥しているせいか喉がカラカラだった。
受け取ったミネラルウォーターをごくごく飲む。
「おいしい!」
「途中からコンドーム使って正解だな。あんなにヤったのに、あんま汚してないや」
「ぶ!!」
「……今鼻から出さなかったか?」
「でてない!だしてない!」
「シャワー浴びてからまた寝るかぁ。汗っかきくん」
「お、おう」
優しく手を差しのべてくれる彼氏は、とてもとってもカッコいい。
俺には勿体ないくらいの容姿をしていて、頭もいい。
すれ違う人が振り向いてしまうくらいのイケメンだ。
そんなイケメンが何故かこんな男の俺に……自分で言うのもなんだけど、ぞっこんで可愛いらしい。
あ、まぁ俺だって凄いスッゴい好きなんですけどね!
……自分の身体につけられた無数の痣を眺めればどんだけ愛されているかがわかる。
……つ、つけすぎだろ……
手を繋ぎながら二人バスルームへ向かうんだけど……
「うぁ!夜景……キレイ……」
向かう方向ではないけれど、窓からキラキラと視界に入る別世界。
そこはキラキラ輝いていて魅力的な光を放っていた。。
「夜明けまでまだあるもんな……」
「こんな景色見れるのも今だけかぁ。はー外寒そう……」
「あーセックスの後に見る夜景最高ー!さっき見たのと全然ちがうな。おまけに全裸の詩くんつきー」
「あのな!」
「それと、はい」
「?」
ポンと手に渡されたのは、昨日二人で買ったキーホルダーだ。
ブラウンの俺の……
?
「これ本当にプレゼントな」
そう言われて中身を確認してみると、見なれない鍵が一つ引っ掛けられていた。
「………これ……」
「宮ノ内家の鍵。詩に渡しておく。俺居なくても自由に使っていいからな?ってあんまり使う頻度は少ないかもしれないけど、俺なりのけじめ。母さんにもちゃんと話してあるから、心配ご無用。詩になら安心して預けられるってさ。何かあった時に鍵を詩が持っていてくれると助かるし」
「え……!!……い、いいの?」
「勿論!使ってやって。あ、夜這いはベランダから来ても全然かまわないから」
「……う、うん……あ、有り難う……なんか……なんかスゲー嬉しいかも………」
「……ん」
……
「どどどどうしよう嬉しくてっ……言葉が……言葉がでて……こないんですがっ!」
「大丈夫。ぷ、その赤い変な顔で十分伝わってるから」
「だ、大事にしますっ!霧緒くんも!お母さんも!宮ノ内家もっ!!」
「お、おう……」
まさかのプレゼントが本当にまさかで!合鍵で!嬉しくて泣きそうだった。
ちゃんとした言葉で伝えられないもどかしさを霧緒に抱きついて補う。
もう!全裸とか関係ないぜっ!!
抱き合い自然に重なり合う二人の唇は、幸せいっぱいに笑っていた。
キラキラの夜景は、
少しずつ美しい朝焼けに変わる。
[クリスマス編 終わり]
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