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第325話*

霧緒 バレンタインデー。 あれは、マジでくだらないイベント…… そんな季節か。 まぁ受験生には関係ないし、俺には必要のないイベントだ。 女子たちは毎年毎年いらねぇって断っているのに、無視して持って来やがるし。 ピラピラふわふわしたラッピングを見るだけでイラっとする。 そもそもそんなに甘いモノは好きじゃないし、食わないから貰ってもゴミになるだけだった。 そして更に手作りとか……チョコを溶かしてまた固めるんだぞ? 知らない誰かが作って、何が入ってるかわからないチョコを食べられるか? 何が入ってるかわからないんだぞ? あんなモノこんなモノが入っているに決まってる。 「……えーと、スゲー嫌そうな顔してるけど、このイベント興味なしですか?」 「あるように見えるか?」 「み、見えねぇっす」 「だろ」 「そうかぁ、じゃあやめるか~バレンタイン」 「……ん?」 「あ、俺からのバレンタインチョコいるかなぁって思ったんだけど、霧緒は受験だし、そもそもバレンタイン自体に興味ないなら必要な……」 「いる」 「……は」 「お前からならいる」 「なななんだ?急にどうした?」 ソファーに座っている詩の隣に座り、詩の身体を両手で抱きしめ、動揺する詩の顔を目の前にしてじっくりと瞳や鼻筋、口元や滑らかな肌を眺めた。 背中に回した左手で、詩の首筋うなじをふわりと撫でてやると、ピクリと恋人の身体が反応するのが可愛い。 ふむ…… 「そうか、そう考えるとバレンタインデーも楽しいイベントに変わるな。何か女子のイベントのイメージが強くてさ」 「い、いや、全然女子のイベントだと思うけど。何と言うかほら、一応俺たち付き合ってるわけだし?ちょっとしたプレゼントはあげた方がいいのかなぁって思ったわけで」 「一応じゃぁないだろ……」 「あ、はい!付き合ってます!めっちゃラブラブっす!!」 「詩くんはさ、毎年チョコ貰ってそうだよな。地元の女子から人気ありそうだもんなぁ……」

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