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第338話 宮ノ内のバレンタイン*

霧緒 最後の試験を無事に終えて、最寄り駅に到着。 あーやっと終わったー!という心地好い解放感で、いつもの見慣れた景色がいつもより美しく見える。 結果はどうあれやることはやったんだ。肩の荷が下りた気がする。 何よりも、今日から思い切り恋人とイチャイチャできるとか思うと、ぶっちゃけスキップしたい気分だ。 今年に入ってからはどちらかと言うとあっちがガードが固くて、そこまでしなくていいのにって呆れるくらい。 まぁそれだけ俺の受験の事を考えてくれていたんだと思うんだけど。 でも、それももう終わりだ。 詩は4月から二年生になるわけだし、勉強に関しても躓くことがないように、出来るだけ見てやろうと思っている。 ……詩の姉さんたちからも、勉強を見てと頼まれているし。 苦手意識がある部分はできないと決めつけるところがあるからなぁあいつ。 問題をチラ見してそっと閉じるし、問題は寝かせて熟成させた方が解ける!とか、死んだ目しながら言ってみたりするの理解はできないけど。ま、そういう阿保なところも可愛い。 詩とコンビニで落ち合う約束になっているので、足取り軽く待ち合わせ場所まで急いだ。 「あれ?宮ノ内……くん?」 「?」 声をかけられて振り向くと、知らない女性……? 「やだぁ……やっぱり宮ノ内くんじゃない?すっごいカッコいい男性がいるって思ったら、やっぱりー……元気にしてる?私よ私!って忘れてるよね。忘れるの得意だものね?宮ノ内くんが一年の時、夏休みにつき合ってた……あーん!思い出して欲しいなぁ」 「………ぁ、三年の……先輩」 「あー!そう!それだけ思い出してくれただけでも嬉しいっ!元気してるー?」 流れるようなサラサラな茶色に染めた艶髪は綺麗で、かなりの美人だっていうのはわかった。 女子大生っぽい?大人の女性。 名前は思い出せないけど、一時期付き合っていたことはかろうじて思い出すことができた。 コツコツとショートブーツを鳴らして近づき、さりげなく俺の腕にそっと手を添えてくる。 ふんわりと香る香水は甘い。 「……なんすか」 「なんすかじゃないよー!久しぶりに会えてテンションあがっちゃっただけー。ちょっと見ないうちに更にカッコよくなったね?今日は学校は?もう終わったの?」 ニコリと笑う口元が赤く艶めいている。

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