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第339話 宮ノ内のバレンタイン2 *

霧緒 「今日は試験だったんで……」 「あ、そっかー!そんな時期だもんね。どう?手応えは」 「えっと、まぁまぁすかね」 「ふーん。宮ノ内くんならいいとこ行けそうだしね。お疲れ様~まだ試験残ってるの?」 「一応今日で終わりました」 「えー!そうなんだ!本当お疲れ様ー!やっと受験から解放されたね」 隣でぴょんぴょん跳ねながら、俺の腕に絡んでくる。 早くどこか行ってくれないかと思うし、俺は早くあんたから解放されたい。 「あの、この腕やめてくれないっすか?」 「あ、ゴメン!つい……なんか当時の事思い出しちゃってつい……ねぇねぇ、宮ノ内くんってさぁ……今特定の彼女さんとかいるの?」 …… なんだろう…… 綺麗な女だとは思うけど、男ウケするだろう上目遣い、そのしぐさや何気無い笑い方とかが苦手だ。 それに何故に彼女がいるとかいないとか、お前に教えなきゃいけないんだって思ってしまう。 「……」 「やーんだんまりやめてー。本当宮ノ内くんって、自分の事は当時から話してくれないんだから。私達さぁ……エッチした仲でしょー?あの時ひと月くらいですぐ別れちゃったけど、私はまだ好きだったんだからね?」 「そっすか……あの俺今、恋人いるんで……」 「えー……そうなの?それって……本命?ここで会えたのもさ、何かの縁だし……ねぇ……これからさ、二人でどこか行かない?私お祝いしてあげるよ?受験解放記念ー!ねぇー行こうよ!お姉さんがおごっちゃうよ!」 はぁああああ? 「ふふふ、聞いて?今日はバレンタインだよ?宮ノ内くんが良ければだけど……私の事…食べてもいいよ?」 ほんのり頬を赤く染めながらも、言ってることは凄く大胆だ。スゲーなこの女。 ……やれやれ…… こういうアピール久しぶりだな。 自分に自信がないと言えないセリフだ。 食べてもいいよ? ……何様のつもりで、そんないかれたセリフ言ってんだ?腹くだるわ! 頭可笑しいだろ。 「あーすんません。無理ス」 「えぇー!ヤダヤダー宮ノ内くん、お姉さんの言うことが聞けないっていうの?もう悲しいー」 更に腕に絡みつき、肩に寄り添ってくる女にいい加減切れそうになったその時。 「宮ノ内せんぱーーーーい」 …… 気がついたら、すぐ目的のコンビニは目の前で…… そこの駐車場で、ひらひらと手を振っているのは、紛れもなく俺の愛しい恋人…… 詩…… 「み や の う ち せんぱーーーーーい!遅刻ですよーーー!」 …… 満面の笑顔でこちらに手を振る恋人が、初めて怖いと思った。

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