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第340話 宮ノ内のバレンタイン3 *
霧緒
「詩!」
とっさにバッと隣の女の腕を振りほどき、詩に駆け寄った。
わ、笑っているけど、かなり目が死んでる……
いつから見ていたんだ。そんなことを気にしてしまう自分がいた。
どんな奴に誤解されてもいいけど、こいつには誤解されたくない。
つかその白目ヤバい……絶対誤解されてる。宮ノ内先輩なんて……久しく呼ばれてねぇ……
「宮ノ内先輩、クソ遅いですよー!……でぇ?その人……誰ですか?」
「……さっきそこで偶然会った。先輩だよ」
「こんにちはー!初めまして!きゃーカッコいい!日ノ原高の一年かしら?うふふ初めまして。宮ノ内くんが一年の時にね、私三年だったのよー?」
詩を見て、テンションあがってるこの女……
それと、俺と女の間にズズズイと割って入って来る詩は、あわあわと慌てる様子もなくとても落ち着いていた。
こういう時の詩は、男前に見えて面白い。
「へぇ……お姉さん大学生ですか?……綺麗ですねぇ……」
「そうなの。やだぁ……綺麗だなんて……ふふありがとう」
「でもすみませんけど、宮ノ内先輩の好みとは違うんで、先輩に馴れ馴れしくしないでください。ささ離れて離れて」
「はぁ!!!?え、何なに……ちょっとこの子失礼じゃない?」
「宮ノ内先輩は、あなたのモノじゃないってことです。勝手に気安く触んな。恋人いるの知らないんですか?」
「な、な、な……何なのあなた!ちょっと宮ノ内くん、この子失礼じゃない!?元カノよ私!元カノ!あなたにそんな事言われる筋合いないんだけど!」
「元カノだからってなんだよ。別れたんだからもう関係ない赤の他人だろ!俺は言う権利あるから言ってんだよ」
「なによ権利って!後輩が生意気に意見いってんじゃないわよ!」
……男前だと思っていたのははじめだけで、詩も段々ムキになってきているのか、口元が尖り始めてきている。
俺とその女の間に入って、俺を完全ガードしている詩が可笑しい。
あークッソ可愛いな……番犬かよ。
前にいる詩の頭をくしゃくしゃとかき回し、詩の肩に手をかけて自分に引き寄せた。
「ハイハイ詩、落ち着けって。お前が心配するようなことになってないから。先輩には恋人いるってもう伝えてあるから……ねぇ?先輩」
「え、ええ……」
引き寄せた詩の右肩に顎をのせ、左肩に肘をつき落ち着かせるように詩の髪を優しく撫でた。
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